各国官製Web地図利用による地理的な見方・考え方の育成

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Development geographical perspectives and ways of thinking by using official national web maps

抄録

<p>1.はじめに</p><p> 地理院地図の登場によってTopographic Map(地形図)を利用した学習は大きく進化した。例えば、地理院地図に備わる各種機能を駆使することで実施することが難しいとされている地域調査的な学習も可能となった(小林2022)。本研究は世界各国の国家地図作成機関によるWeb地図サイトを利用して行った地理院地図利用と同様の学習についての報告(小林2018)の続報である。</p><p>2.各国の官製Web地図の実状</p><p> 従来、紙媒体のTopographic mapとして空間情報を提供してきた各国の国家地図作成機関も近年は我が国の地理院地図と同様にWeb地図での提供がされている。当初は紙媒体のTopographic mapを購入するための検索見本としてWeb上で画像が提供されていたが、徐々にそれ自体が提供方法となり日本の地理院地図と同様に各種の計測機能や空間情報の重ね合わせ機能、さらに空間データのダウンロード機能なども備えたGeoPortalの役割を担うようになっている。地図画像はWeb上での表現に適したものが基本であるが紙媒体のTopographic mapを画像として提供しているサイトも少なくない。世界各国の紙媒体のTopographic mapは高価であるが、これを無料で利用できるのは大きなメリットである。</p><p>3.授業の概要</p><p> 発表者の勤務校である千葉県立千葉高等学校では地理は第一学年で必修(320名)の他、第三学年に選択科目で設置され約半数の生徒が受講している。本研究に関する授業は第三学年の選択科目にて実施した。「各自興味がある地理的事象について世界各国官製Web地図とストリートヴューなどの写真などと組み合わせ、プレゼンテーションソフトを使って一人2分間で説明せよ。」と発表を課題とした。授業はPC室にて行い、最初2時間で各国の官製Web地図サイトの紹介や一部の国を対象に操作方法の説明などを行い、4時間を作成時間とし、2時間をクラス全員の発表時間とした。</p><p>4.分析</p><p> プレゼンテーションソフトのスライドショーを利用しての発表では地図を複数画面で利用が可能である。ここで、異地点比較、視点変化、縮尺変化、経年変化、3D表現、断面図作成各種写真と地図の照合などを行う(図1)。発表内容を①位置・分布②場所③地人相関④空間的相互作用⑤地域の地理的な見方・考え方とこれに加えて⑥関連した記述⑦その他特筆すべき内容の7つの観点で評価する(図2)。地理院地図を使っての同様の授業(小林 2022)と同じように発表スライドと発表内容には対応関係があり整合性がみられた。第三学年で地理を選択した生徒が第一学年時に行った地理院地図での同様な学習における同じ評価方法による発表スライドの技能得点、発表内容得点、興味関心得点を比較するとそれぞれ7.30→7.76、9.36→10.21、8.27→10.66とそれぞれ伸びた。また、発表スライドの技能得点と発表内容得点の相関係数もほぼ同じ(0.704→0.692)となった。学習活動として十分な効果を得た。</p><p>5.まとめと展望</p><p> この学習は2022年から実施の新しい学習指導要領下での地理探究向きの学習として考えられる。また、地域調査的な学習とともに外国地誌学習として捉えることも可能と考える。</p><p>参考文献</p><p>小林岳人 2019.高等学校地理学習における各国の官製Web地図の利用とその効果.日本地理学会春季学術大会要旨集:318.</p><p>小林岳人 2020.世界各国の官製Web地図サイトの紹介と授業 -「地理総合」での「地図とGIS」. 歴史地理教育 913: 46-51.</p><p>小林岳人 2022.地理院地図を活用した地域調査学習とその考察 帝国書院地歴・公民科資料ChiReKo 2021-2: 28-31.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858619526154880
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_59
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ