1930年代の北九州地域における社会運動

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書誌事項

タイトル別名
  • Social movement in Kitakyushu region during 1930s

説明

<p>昭和初期は,全国各地で電灯・電力・電車・ガスなど各種料金の値下げ運動や借家・借地争議など,「生活防衛運動」が展開された時期である.その中心を担ったのは,農民組合,無産政党,労働組合,各種議員のほか,町などの地域組織と市民であり,異なる目的と意図を持つ各主体は,時に協力し時に対立しながら,地域独占事業への異議申し立てを行った.本報告の目的は、1930(昭和5)年から翌年にかけて北九州地域で発生した,九州電気軌道株式会社(以下,九軌と略)に対する電灯・電力料および電車賃の値下げ運動について,地域社会における運動主体の動向と運動の空間スケールに着目しつつ,その展開の一端を検討することにある.</p><p> 運動は当初,門司市や八幡市などにおいて労働組合や市会議員などを中心に進められると同時に,沿線の複数自治体(門司市,八幡,折尾町)が協力して値下げ交渉を行った.しかし,交渉が行き詰まったことから,門司市では運動に地域住民を動員するため,町総代など地域の代表者も運動に組み込み,運動の「民衆化」を図った.この後,運動の激化を懸念した警察と行政によって調停が行われ,一定の値下げで妥協したが,一部の町総代らはこの調停に不服を申し立て運動の継続を主張した.</p><p> 以上,この値下げ運動は,当初市の有力者などにより指揮されていたが,途中から市会議員と町総代が対立する等、民衆の動向が運動に大きな影響を及ぼすようになったといえる.こうした地域住民のエネルギーは,公共事業を独占する資本への怒りのみならず,選挙に基づく「代表制」に対する不信も生み出したと考えられる.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858619526155776
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_79
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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