中学校教師の相談・情報交換経路に関する事例研究

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抄録

本研究は,個々の教師が保有する教師間の相談・情報交換経路を明らかにすることを目的とする。個々の教師の保有するネットワークを描き,教師の人的資源の一端を解明する。  教師間の関係は,学校内外に広がりを持つ。そのなかでも,同僚性の機能については,個人主義的な教師の存在をプラスとして捉えた同僚関係の構想(諏訪)や,チームとして機能する可能性(紅林)も期待されるが,プライ バタイゼーションの進行(油布)等,同僚間の限定的な関係やその負の側面も指摘されてきた(ハーグリーブス,紅林)。これらの同僚関係やチームとしての機能は,学校を単位として論じられ,同様に教師の相談経路も主に校内を対象として検討されてきた。  一方で,教師間の関係は校内に留まらず校外にも広がる。教師が必ずしも校内の教師のみに相談・情報交換経路を保有しているとは限らず,校外の教師への経路を保有している実態(川上・妹尾)や,教師の校内外両方の相談経路を保有している実態(兼安)もあり,校内に限定した教師間の相談・情報交換経路の想定には限界が生じていると言えるだろう。  しかし,以上の先行研究では学校という組織内や同一自治体内における教師間の関係が論じられているため,個々の教師のエゴセントリックな関係には焦点化されておらず,その相談・情報交換経路の内実は明らかではない。そこで,集団に位置づく教師という枠組ではなく,教師個人を中心として捉えることで,教師が相談・情報交換経路として構築する校内外の教師を含めたネットワークの構造を描くことを試みる。したがって,本研究におけるネットワークとは個人が保有する人的な繋がりやその集合体を指す。教師個々のネットワークの解明は,研修機会やその在り方,学校文化にも繋がる重要な基盤となり得る。  また,相談・情報交換の内容については,教師の中心的職務である授業(教科指導)に限定して検討する。これまで,教師の相談・情報交換経路の検討ではその内容が限定されてこなかったが,教師の職務内容は多岐にわたり,職務内容毎に相談・情報交換の相手が異なることも想定されるため,個別の検討が求められる。加えて,教科担任制である中学校においては,校内に同教科教師が在籍しない場合,校内の経路が想定されにくい上,学校の小規模化等から益々そのような状況が発生する可能性がある。したがって,教師が授業に関して活用する校内外のネットワークの現状解明は重要な課題である。  そこで本研究は,中学校教師の授業に関する相談や情報交換の相手について,個々の教師を中心としたネットワーク解明を目的とする。ネットワーク構成員との出会いの契機や,相談・情報交換の内容への着目により,ネットワーク内の教師との関係性の分析を試みる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858752018532224
  • DOI
    10.20576/bojase.c3307
  • ISSN
    24241504
    09139427
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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