2020東京オリンピック後のライフスタイルスポーツ

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タイトル別名
  • Lifestyle sports after the 2020 Tokyo Olympics:
  • a reflection on the “prophecy” of Antoine Cantin-Brault
  • ―カンタン=ブローの「預言」への一考察―

抄録

本稿の目的は、国際オリンピック委員会によるライフスタイルスポーツのオリンピックへの取り込み(co-option)をめぐるカルチュラルポリティクスに注目し、ライフスタイルスポーツがオリンピックとの関連で避けることのできない「コンフリクト」について、検討を試みることにある。<br>  このコンフリクトとは、ライフスタイルスポーツがオリンピックに取り込まれるとき、ライフスタイルスポーツが、ヘニング・アイヒベルグ(Henning Eichberg)が述べた「業績達成型スポーツ(achievement sports)」という近代スポーツのイデオロギーとの「同一性」を求められることである。以下に、本稿の議論のプロセスを簡潔に示したい。<br>  第1章では、ライフスタイルスポーツが「業績達成型スポーツ」という近代スポーツのイデオロギーへの「抵抗」や「オルタナティブ」といった独自のスポーツ文化を掲げて誕生、発展してきた意義を、改めて確認する。<br>  第2章では、ライフスタイルスポーツがIOCによるオリンピックへ取り込まれるプロセスを、2014年12月にIOC総会で決議された「オリンピック・アジェンダ2020」の前後でのカルチュラルポリティクスの違いに注目する。<br>  第3章では、ライフスタイルスポーツがオリンピックに取り込まれるとき、ライフスタイルスポーツが近代スポーツのイデオロギーとの「同一性」を求められることで生じる「コンフリクト」について検討を試みる。この問題を検討する際、テオドール・アドルノ(Theodor Adorno)が『否定弁証法』(1966=1996)において深化させた「物象化」概念を援用したアントワーヌ・カンタン=ブロー(Antoine Cantin-Brault) のスケートボード分析に注目したい。<br>  カンタン=ブローは「スケートボードが2020年にオリンピック種目になる可能性があることは、スケートボードの物象化の最後の一撃となることは間違いないだろう」[Cantin-Brault, 2015: 65]と述べたが、彼の「預言」をどのように解釈するのかが、2020東京オリンピック後のライフスタイルスポーツのあり方とも関わることになると考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858851008576256
  • DOI
    10.5987/jjsss.30-1-03
  • ISSN
    21858691
    09192751
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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