フェミニスト経済学のためのqueerユートピア

DOI 機関リポジトリ Web Site オープンアクセス

書誌事項

タイトル別名
  • Queer utopia for a feminist economics

この論文をさがす

説明

新古典主義経済理論における経済人は、自由で自己中心的で自律的なアイデンティティであり、地面から完全な形でキノコのように現れて育っていく、独立した自己として想定される。家族関係は夫、妻および子供の完全な併合体として考えられており、それぞれの機会と結果が同一でないことを無視している。個人と家族についてのこれらの概念は、次にフェミニストユートピアが提案し、フェミニスト経済学に組み込まれた人間の相互作用のビジョンと並置される。これらのビジョンは、ミクロレベルではジェンダーアイデンティティやジェンダー関係の再考と、仕事や家庭内のケア関係の再編を含む。マクロレベルでは、自己利益と他者の支配に基づく経済システムこそが、潜在的に致命的な資本主義、家父長的、植民地主義経済を支えてきたことが強調される。このシステムは、無報酬の家事労働や自然の影響など、システムが認識しない価値に対応できないため、非常に危険である。本論では新型コロナの危機は、グローバルノースに到達する致命的な不平等というディストピアの一部として解釈される。しかし本論の後半では、この危機が新たな認識の始まりとしても議論される。フェミニスト経済学がとりうるユートピア的な旅は、道連れとしてクィア、先住民族、およびポストヒューマン理論を伴うだろう。進化系のフェミニスト経済学は、これらの分野のインプットに助けられつつ、男性中心主義かつ人間中心主義の経済学を克服し、クィアや被植民地人および先住民族、貧しい女性*、介護者、グローバル企業の工場労働者などにより多くの正義を可能にするだけでなく、環境および地球自体の破壊を防止する経済政策を生み出すことができる。クィア理論とその遊び心のある未来の概念は、恋愛関係や家族がヘテロ規範的である必要はなく、流動性があること、より大きなコミュニティへの義務があること、国境はないことを指摘している。先住民族の考え方からは、フェミニスト経済学は、西洋近代のパラダイムへの依存をいかにして脱却するかや、異なる時間感覚、長期的にサステナブルなあり方、敬意と相互性と責任のある大地や自然と関係を学ぶことができる。ポストヒューマン理論からは、生物学や他の自然科学で事実とされていることに基づいた人間中心主義に疑問を呈することを学ぶことができる。これらの思考実験に続く次のステップは、体系的な個人主義、人種化、ジェンダーの役割、家族/世帯、国家、お金、クロノ規範的時間、競争市場などの有害な制度を作り直し、現在の危機を利用して、支配的な経済秩序の代替となるフェミニスト経済学を想像することである。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ