RANKL逆シグナルの新規薬理標的としての可能性

書誌事項

タイトル別名
  • The potential of RANKL reverse signaling as a novel pharmacological target

抄録

<p>RANKLは双方向性のシグナル分子であり,RANKを発現する細胞に作用して下流応答を活性化する順シグナル経路と,RANKLを発現する細胞内で下流応答を活性化する逆シグナル経路がある.RANKL逆シグナル経路の活性化は,複数のRANKL三量体が分子間架橋され,クラスターを形成することでトリガーされる.成体においては,RANKLは主に骨組織と免疫系に発現が認められる.骨組織に関してはRANKL順シグナルと逆シグナルを分離した解析が進んでおり,順シグナルは成熟破骨細胞の形成を誘導して骨吸収を担う一方で,逆シグナルは破骨細胞に由来する共役因子の一つである膜小胞型RANKによって活性化され,骨芽細胞の初期分化の促進を担う.免疫系においては活性化したT細胞を含むリンパ球でRANKLの発現が認められ,RANKを発現する樹状細胞などの抗原提示細胞との相互作用によって,順シグナルおよび逆シグナルの活性化が生じると考えられるが,両者の作用を分離した解析は進んでおらず,それぞれが担う生理機能の解明は今後の課題と言える.RANKL逆シグナルを活性化するためには,RANKL細胞外ドメインに結合する抗体の可変領域などを利用し,これを複数連結することでRANKL三量体間を架橋できるコンストラクトが有効である.また分子サイズを低く抑えることで,RANKL三量体間を架橋しつつも,RANKとの相互作用には影響しないコンストラクトも存在し,逆シグナルの選択的な活性化も可能である.一方,RANKL逆シグナルの活性化を阻害する分子のデザインに関しては今後の実証研究が必要であり,特に逆シグナルの活性化のみを選択的に抑制するためには小分子化合物が必要となる可能性がある.RANKL逆シグナルの生理機能,および活性修飾方法の双方で残されている課題が今後解決されれば,疾患治療への応用に道が拓けると期待される.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 158 (3), 253-257, 2023-05-01

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (28)*注記

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