<論説>戦後沖縄における熱帯果樹の導入と産業形成 (特集 : 食)

  • 中窪 啓介
    東京農業大学国際食料情報学部食料環境経済学科助教

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>The Introduction and Industrialization of Tropical Fruit Production in Postwar Okinawa (Special Issue : Food)

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抄録

本研究では戦後沖縄における熱帯果樹の導入と産業形成の過程と諸相を、関連諸主体の動向から解明した。本土復帰前にはハワイ大学の園芸研究者が実地調査と勧告、新品種の導入、研究者の育成を図り、産業形成の芽が生じた。一九八〇年代に熱帯果樹は県外移出を妨げていたミバエ類の根絶に目処が立つ中、地元紙誌での関連記事の掲載、地元新聞社と種苗業者の組合との協働の取り組みにより、庭先栽培と経済栽培の両面で導入が活性化した。産業形成の点では、生産者は生産拡大の初期に農協の支援が得られなかったため、台湾や東南アジアへ行き種苗を入手したり通販の顧客を開拓したりして、農協外で独自に生産・販売対応を図ってきた。ゆえに、沖縄農業の課題として論じられてきた農協による産地形成は、熱帯果樹では十分進展しなかった。しかし農協広域合併などを背景に二〇〇〇年代から成果が現れはじめ、農協外でも市場成熟化のもと高付加価値化の機会が生じている。

収録刊行物

  • 史林

    史林 106 (1), 218-258, 2023-01-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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