歯肉のメラニン沈着の審美治療としてEr:YAGレーザーをマイクロサージェリーで応用した長期経過

DOI
  • 井上 剛
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 う蝕制御学分野
  • 水谷 幸嗣
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野
  • 三上 理沙子
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野
  • 島田 康史
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 う蝕制御学分野
  • 青木 章
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 歯周病学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Long-term Outcomes of Er: YAG Laser Microsurgery for Melanin Removal in Gingiva: A Case Report

抄録

<p> 緒言:Er:YAGレーザーの発振波長2,940nmは水への吸収性が非常に高く,軟組織・硬組織ともに効率よく蒸散できる.特に歯肉の蒸散においてEr:YAGレーザーは周囲組織への熱の影響がきわめて少なく,臨床において歯肉切除術や小帯切除術などの軟組織治療だけでなく,歯肉色素沈着除去やメタルタトゥー除去などに応用されている.そこで,Er:YAGレーザーを用いて歯肉のメラニン除去をマイクロサージェリーで実施した症例の長期経過を報告する.</p><p> 症例:患者は29歳男性,喫煙者で1日10本の喫煙があり,歯肉の審美障害を主訴に来院した.下顎前歯部の付着歯肉に広範囲にメラニン沈着を認めた.治療の開始にあたり,まず禁煙指導を行い,そのうえで重度のメラニン色素沈着部位の歯肉蒸散に対してEr:YAGレーザーを用い手術用顕微鏡下で行うことを計画した.</p><p> 成績:禁煙指導は奏功し,喫煙習慣がない状態で処置を行った.下顎前歯部の歯肉頰移行部および歯間乳頭部に局所麻酔を行い,Er:YAGレーザー(Dentlite,HOYA ConBio)を10~30Hz,パネル出力設定80 mJ,注水下にて,2種類のコンタクトチップを用いてメラニン色素沈着部位の歯肉蒸散を行った.マイクロサージェリーとして行うことで,残存する微細な色素沈着領域をより確実に視認でき,正確で安全な処置が可能であった.歯肉縁や歯間乳頭部など術後の歯肉退縮を偶発しやすい部位においても,拡大視野下であることにより慎重な組織蒸散が容易であった.レーザー照射面には明らかな凝固変性や炭化はなく,上皮を蒸散した面には白色の結合組織の露出を認めたが,侵襲は非常に軽度なため術後の鎮痛薬や抗菌薬などの投薬は行わなかった.創面の治癒は良好かつ迅速で,術後7日には上皮化が認められた.本症例では下顎前歯部唇側のメラニン除去を3回に分けて治療を完了した.術後1年6カ月には色素沈着の再発はほとんどみられず,きわめて良好な経過であった.術後16年後には軽度から中等度の再発が生じていた.</p><p> 結論:本症例では,喫煙により歯肉に著しく沈着したメラニン色素を,Er:YAGレーザーをマイクロサージェリーにて応用することで低侵襲に処置を行うことができ,良好な治癒成績が得られた.歯肉の審美障害の治療にEr:YAGレーザーをマイクロサージェリーで使用する有効性が示唆され,中期的にも良好な経過を維持できた.</p>

収録刊行物

  • 日本歯科保存学雑誌

    日本歯科保存学雑誌 66 (2), 147-153, 2023-04-30

    特定非営利活動法人 日本歯科保存学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390858983784035328
  • DOI
    10.11471/shikahozon.66.147
  • ISSN
    21880808
    03872343
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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