都市と地域の経済に関するジェイン・ジェイコブズによる理論的洞察の再検討

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タイトル別名
  • Reexamination of Jane Jacobs’ Theoretical Insights into Economies of Cities and Regions from the Viewpoint of Social Economic Geography

説明

<p>    本稿は,ジェイン・ジェイコブズの都市経済に関する理論的洞察を,社会経済地理学の観点から再検討することを目的とする.そのために,Jacobs(1969)とJacobs(1984),及びそれぞれの和訳書を取り上げて,両著作に共通する論理と違いを考察した.その結果,ジェイコブズの言う移入置換はNorth(1955)の移出ベース論に通ずることが明らかとなった.移入置換のためにはインプロビゼーションを必要とすると彼女は述べたが,これは漸次的イノベーションを意味する.Jacobs(1969)は農村と対置される都市の経済を論じたが,Jacobs(1984)は農村や中小都市を含む都市地域が国民経済の発展の礎であると論じた.これは大都市圏を意味する.諸都市あるいは諸都市地域が相互交易ネットワークを形成することが各都市あるいは各都市地域内部の経済的多様性を作り出すとともに国民経済の発展につながると論じたのである. <BR>    以上のジェイコブズの洞察は集落よりも大きく国家領域よりも小さなスケールの地域の経済発展を考えるうえで重要であるが,日本における中核や周辺での経済に関するジェイコブズの理解には誤りがある.九州の農村部にはインプロビゼーションと移入置換を実行し,かくして開発された域内向けの新しい財を移出財に転換することに成功した中小企業が少なくないからであり,都市地域も九州では形成されているからである.とはいえ,現在の九州農村部の経済発展に関する展望が明るいというわけでは必ずしもない.この点に関して,地域が活力をもつためには,ドイツ社会地理学が重視する「生活の基本的諸機能」を充足しうる地域の形成が重要である.そうした地域形成が大都市圏内でのみ可能というわけでは必ずしもない.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390859093901913088
  • DOI
    10.20592/jaeg.68.1_97
  • ISSN
    24241636
    00045683
  • 本文言語コード
    ja
  • 資料種別
    journal article
  • データソース種別
    • JaLC
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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