絶滅した九州のツキノワグマ個体群の分子系統と新しいハプロタイプの発見

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  • Molecular Phylogeny and New Haplotypes of Extinct Asian Black Bear Populations in Kyushu Island, Japan

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<p> 日本のツキノワグマ(Ursus thibetanus)は,ミトコンドリアDNA(mtDNA)のDループ領域における約700bpの配列に基づいたハプロタイプの解析により,分子系統が3系統(東部,西部,南部クラスター)に分かれていることが明らかとなっている。2012年,環境省は九州のツキノワグマ個体群について,1941年の記録を最後に信頼できる記録や情報が無いことから絶滅を宣言した。現在,九州のツキノワグマ個体群に関する試料および遺伝的な解析結果は非常に少ない状況であることから,九州のツキノワグマの分子系統学的な特徴は不明確である。本個体群の分子系統を明らかにすることは,アジア大陸から日本へのツキノワグマ個体群の軌跡を理解する上で重要な情報になるだろう。本研究では,九州の様々な場所で発見された4つの古い骨の試料を用いて,Dループ領域の約700bpの配列に基づいたハプロタイプを解析した。その結果,九州のツキノワグマについて2つの新しいハプロタイプを検出することに成功した。これら新しいハプロタイプは,両方とも西部クラスターに属するものであった。本研究の結果は,中国地方西部と九州の間でツキノワグマが連続的に分布していたこと,および生息地の分断後に遺伝的変異が生じたことを示唆した。また,これらの結果はアジア大陸から日本列島へのツキノワグマの移動に関する先行研究の考察を支持するものであった。</p>

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