筋線維横断面における近似形状の定量解析と筋線維横断面積との関係

DOI
  • 永野 克人
    日本保健医療大学 保健医療学部 理学療法学科

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p>正常な骨格筋を形態学的に明らかにすることは,筋疾患の予防および治療に対する多面的および比較的評価として重要である.骨格筋は,筋原線維や筋線維,筋の形態について,それぞれ電顕学的および光顕学的,肉眼的に分析されている.筋原線維のA帯は六角形に配列された構造が明確に観察され,また,筋は紡錘筋および羽状筋,鋸筋などに分類されている.しかし,筋線維横断面(MFCS)の形状は,主観的所見として多角形を呈すると記載したものはあるが,それらの形状判定方法を記した報告はない.MFCSは様々な角度で屈折した辺縁があり,また,円形度が異なる角が混在する.従って,角とそうでないものを客観的に区別し角数を計算できなければ,多角形の種類を判定することは困難である.また,MFCSの形状と筋線維横断面積との関係については明らかにされていない.そこで,本研究はMSCFの辺縁および角の判定基準を定め,MFCSの近似形状を決定し,筋線維横断面積との関係を明らかにすることを目的に行った.</p><p>【方法】</p><p>Wistar雄性ラット11週齢(体重338.5±6.8 g)計5匹のヒラメ筋を試料とした.筋試料は,ドライアイスアセトンで冷却したイソペンタン内で急速凍結し,クライオスタット(Leica社)にて10 μm厚で薄切し,その切片をHematoxylin Eosin染色した.光学顕微鏡にて筋組織画像を取り込み,各筋の筋線維100本ずつ計500本についての角数および筋線維横断面積をNIH画像処理ソフトImageJ 1.48u にて計測した.MFCSの辺と角の判定は,Corner and side judging standard(CSJ基準)を定め実施した.各データは,正規性および分散を検定後にスピアマン順位相関係数検定およびボンフェローニ法による多重比較検定を行った.</p><p>【結果】</p><p>MFCSの近似形状は,CSJ基準に基づくと平均5.0±0.9角となり,三角形2.4%,四角形27.6%,五角形41.4%,六角形23.6%,七角形4.6%,八角形0.4%と五角形の占める割合が最も多く,次いで四角形,六角形の順に多く,八角形の筋線維は非常に稀だった.筋線維横断面積と角数は,弱い正の相関が認められ(r=0.350,p<0.001),角数が多いほど筋線維横断面積が大きい傾向が認められた.</p><p>【結論】</p><p>ラット11週齢のヒラメ筋筋線維の近似形状は,五角形が最も多く,これに四角形と六角形を合わせると92.6%を占めることから,ヒラメ筋筋線維は五角形を中心とした近似形状を呈していることが推測された.また,MFCSは,筋線維横断面積との相関も認められたことから機能的性質と関係することが示唆された.MFCSの近似形状評価は,正常な筋と比較することで筋変性の予防および治療に対する新たな一指標として利用できる可能性がある.</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は,「動物の愛護及び管理に関する法律」および日本学術会議の定めた「動物実験の適正な実施に向けたガイドライン」を遵守し,また新田塚医療福祉センター倫理審査委員会の承認を得て実施した.</p>

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