コロナ禍における地域高齢者の生活機能の変化パターン:お達者研究

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>新型コロナウィルス感染症の拡大により、我が国においても緊急事態宣言等が発出され活動制限が行われた。活動制限は感染を防ぐことに効果的である一方、高齢者の心身機能の低下が懸念されている。生活機能低下はフレイルや要介護の発生リスクを高めるため、長期化する活動制限下においても生活機能を維持することが重要であるが、コロナ禍において高齢者の生活機能がどのように変化したかは明らかになっていない。そこで本研究は、コロナ禍以前からの2年間の縦断データから高齢者の生活機能の変化パターンを同定し、その関連要因を検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>地域在住高齢者のコホート「板橋お達者健診2011」の受診者を対象として、2019年10月(T0)調査をベースラインとし、2020年10月(T1)、2021年10月(T2)に追跡調査を行い、T0といずれかの追跡調査で基本チェックリストに回答があった520名(男性210名、女性310名)、平均年齢73.2(標準偏差 6.3)歳を分析対象とした。生活機能は基本チェックリスト全25項目を用い、合計得点の変化パターンおよびT0からの合計得点の差分の変化パターンを混合軌跡モデリングによって同定した。さらに、T0時の治療中の病気、運動習慣、社会参加、就労状況、社会的ネットワーク(LSNS-6)を 独立変数、合計得点の差分の変化パターンを従属変数として、性・年齢とT0時の基本チェックリストの得点を調整した多項ロジスティック回帰分析を行った。</p><p>【結果】</p><p>合計得点の変化パターンは、T0時の得点が11点の高群(8.4%)、5 点の中群(31.3%)、2点の低群(60.3%)の3パターンに分かれ、2年後の得点の増加は中群では約2点であったが、その他の群では1点未満であった。合計得点の差分の変化パターンは、2年後に約3点下がった改善群(12.1%)、得点に変化がなかった維持群(67.1%)、2 年後に約4点上がった悪化群(20.8%)の3パターンに分かれた。維持群と比較して、悪化群、改善群との間に有意な関連項目は認められなかった。</p><p>【結論】</p><p>合計得点の変化パターンはいずれの群においても2年間で得点の大きな変化は見られず、差分の変化パターンにおいても維持群が約7 割であったため、お達者健診受診者ではコロナ禍による活動制限下でも生活機能を維持していた者が多かったことが考えられた。一方、一部の高齢者では活動制限が長期化することにより生活機能低下が進む可能性も考えられた。本研究では、生活機能の変化と関連する要因を明らかにすることができなかったため、今後コロナ禍でのコーピング行動等に着目した更なる研究が必要である。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は、東京都健康長寿医療センター倫理委員会の承認を得た(承認番号:R21-033)。参加者には口頭および文書にて研究目的や研究内容を説明し、書面での同意を得た。</p>

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