当院脳梗塞患者における血栓回収療法後の臨床転帰と関連因子の検討

DOI
  • 宇都宮 圭佑
    社会医療法人財団池友会 新行橋病院 リハビリテーション科
  • 久保田 賢治
    社会医療法人財団池友会 新行橋病院 リハビリテーション科
  • 竹村 哲
    社会医療法人財団池友会 新行橋病院 リハビリテーション科
  • 大島 由依
    社会医療法人財団池友会 新行橋病院 リハビリテーション科
  • 立部 将
    社会医療法人財団池友会 新行橋病院 リハビリテーション科
  • 藤井 弘通
    特定医療法人敬愛会 新田原聖母病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>近年、急性期における血栓回収療法など治療技術は著しく進歩している。当院でも血栓回収療法施行件数が増加しており、リハビリテーションも早期に実施しているが重症度の相違や残存症状に多くの違いがあり、転帰等の予後予測因子に一貫性がないのが現状である。また、血栓回収療法後の開通率の違いが及ぼす影響について述べている報告も少ない。そこで当院における血栓回収療法後の臨床転帰を軸に関連因子を調査し、今後の予後予測因子を調査した。</p><p>【方法】</p><p>2018年1月から2021年9月に当院で脳梗塞診断を受け入院した853症例を対象とし、入院中、医師の判断のもと血栓回収療法を行っ た患者154例の内、病前施設群、リハビリテーション未介入、死亡退院51症例を除外とし病前自宅群103症例を抽出し、転帰良好群 及び転帰不良群の2群間を先行文献に基づき年齢、性別、塞栓源、基礎疾患、TICI、閉塞部位、左右病変、入退院時mRs(modified Ranking Scale)、Br.s(Brunnstrom stage)、MMSE(MiniMental State Examination)、FIM(Functional Independence Measure)、高次脳機能障害、失語症の有無に分類した。統計解析は対応のないt検定、Mann-Whitney検定、χ2検定を用いた。なお、全ての統計解析はStat Flex Ver.6を用い、有意水準αは5%とした。</p><p>【結果】</p><p>入退院時MMSE(p=0.01)、入退院時運動・認知FIM(p=0.01)、入退院時Br-stage上肢・手指・下肢(p=0.01)、退院時mRs(p=0.01)に有意差を認めたが年齢(p=0.10)、性別(p=0.24)、塞栓源(p=0.83)、基礎疾患の有無(p=0.29)、内服状況(p=0.20)、TICI(p=0.44)、閉塞部位(p=0.98)、左右病変(p=0.11)、入院時mRs(p=0.11)、失語症(p=0.06)、高次脳障害(p=0.16)には差を認めなかった。</p><p>【結論】</p><p>今回の研究では、治療後身体、認知機能が保たれている症例は予後良好という結果となった。しかし、失語症、左右病変、家族構成において、有意差は認められなかったものの関連因子となりうる結果となった。失語症合併は円滑な意思疎通が困難でリハビリテーション介入や進行に影響が生じる可能性があると推察される。同じく左右病変での差違は言語中枢に基づく結果ではないかと思われる。治療までの時間に関する統計解析は出来ていないが、発症から治療までの時間はガイドライン上および各論文においても重要視されているため、同居人の存在は治療までの時間短縮に有効である可能性があると考えられる。その為、今後は症例数を増やし発症から治療までの時間を把握、再開通率との関連を検討する必要がある。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>今研究を行うにあたり、個人を特定するような情報を開示しないようナンバリングを行うことで、対象者を匿名化し、プライバシーの保護に努めた。</p>

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