病棟看護師と理学療法士の協働によるメンタルヘルス対策及び腰痛対策が与える効果の予備的研究

DOI
  • 田上 裕記
    JA愛知厚生連 足助病院 リハビリテーション室

Abstract

<p>【はじめに、目的】</p><p>産業保健領域において、看護師の腰痛を含めた身体愁訴は心理的不健康による影響が指摘されている。腰痛有訴率が高い看護師は、腰痛対策に加えメンタルヘルス対策を講じることが有効であり、身体的及び精神的な健康を改善させることで労働生産性を向上させることが期待される。今回我々は、病棟看護師に対しメンタルヘルス及び腰痛対策を実践することでメンタルヘルスの改善や腰痛の減少を促進し、労働生産性を高める効果を検証することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は、腰痛有訴者である常勤勤務の病棟女性看護師(整形外科、内科混合病棟)18名とした。方法は、病棟看護師をランダムに3群(A群:メンタルヘルス対策+腰痛対策群、B群:腰痛対策群、C群:コントロール群)に分類した。指導的役割は、看護師(2名)と理学療法士(1名)が行い、メンタルヘルス対策は看護師、腰痛対策は理学療法士が実践した。介入期間は3ヶ月間とした。</p><p>メンタルヘルス対策:①職場環境へのポジティブアプローチ(参加型討議、島津ら、労働生産性の向上に寄与する健康増進手法の開発に関する研究、2019)、②上司のサポート強化(個別面談の実施頻度の増加)</p><p>腰痛対策:①腰痛研修会の開催、②腰痛予防体操(午前始業前、午後始業前)の導入</p><p>調査項目は、基本属性、労働状況、労働生産性(WHO Health and Work Performance Questionnaire Japanese edition: WHO HPQ)、腰痛評価(腰痛VAS、介入前後の腰痛の変化)、精神的健康評価(Kessler10)とした。介入前後の腰痛改善率及びKessler10スコア、WHO-HPQスコアを比較検討した。</p><p>【結果】</p><p>介入期間3ヶ月の間にA群の1名が離脱(部署異動)したため、A群5 名、B群6名、C群6名となった。介入前後の腰痛改善率は、B群:67%、A群:60%、C群:11%の順に高かった。精神的健康度は介入前後で比較し、A群(-3.0点)で減少し、B群(+0.7点)及びC群(+0.1点)では増加し、A群において精神的健康度の改善が認められた。労働生産性の介入前後の変化において、A群(+0.4点)は増加し、B群(-0.8点)及びC群(-0.3点)は減少した。</p><p>【結論】</p><p>腰痛対策のみを実践したグループは、介入前後において腰痛は改善したが、精神的健康度の改善と労働生産性の向上は認められなかった。一方、腰痛対策とメンタルヘルス対策を併用して実践したグループは、腰痛改善率、精神的健康、労働生産性のいずれの項目も向上した。労働損失であるAbsenteeismやPresenteeismには心理的要因や筋骨格系障害が影響しているため、心身の健康問題の予防、改善を促進することによって、労働生産性の改善につながったことが考えられた。また、腰痛の慢性化は心理社会的要因と密接に関わっており、腰痛対策に対してもメンタルヘルスへのアプローチの必要性が考えられる。今回の結果より、労働生産性の向上のためには、腰痛対策とメンタルヘルス対策を併用して行うこと有効性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は、JA愛知厚生連足助病院倫理委員会の承認を得た(承認番号T21-003)</p><p>本研究の趣旨、内容、個人情報の保護や潜在するリスクなどを書面にて十分に説明し、署名による同意書の承諾を得て研究を行った。</p>

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