注意障害を伴う右被殻出血患者に自動車の運転再開を目指してVirtual Reality技術を用いた一症例
説明
<p>【症例紹介】</p><p>対象は右被殻出血発症後3ヵ月経過し、当院の外来リハビリテーションを利用している40代女性である。本症例は日常生活が自立レベルであるものの、注意障害を呈しているため医師から自動車運転の許可が下りなかった。しかし、仕事復帰や自動車の運転再開を希望しているため、注意障害の改善が必要であった。近年、Virtual Reality(以下:VR)技術を用いたリハビリテーションが脳卒中患者の注意障害を含めた高次脳機能障害を改善させており(Lever et al., 2017)、本症例にも有効な手段であると考えた。今回、注意障害の改善を目的にVR技術を用いて介入効果が得られた一例を紹介する。</p><p>【評価結果と問題点】</p><p>日常生活動作の自立度はFunctional Independence Measureで126点であった。脳卒中機能評価表(Stroke Impairment Assessment Set、以下:SIAS)は合計75点であり、上下肢に明らかな運動・感覚麻痺は認めなかった。脳血管障害患者の就労・非就労を評価するための注意・遂行機能テストにTrail Making Test part A、B(以下:TMT-A、TMT-B)、Clinical Assessment for Attention Test(以下:CAT)視覚性末梢課題②を実施した(用稲ら、2008)。TMT- Aは113秒、TMT-Bは244秒であり、CAT視覚性末梢課題②は61秒であった。問題点はInternational Classification of Functioning, Disability and Healthに則り、心身機能・身体構造に注意障害、参加に非就労および運転の中断とした。</p><p>【介入内容と結果】</p><p>本症例は1日2単位、週4回のリハビリテーションを4週間行った。週2回は有酸素運動および下肢、体幹の筋力強化練習などの理学療法、週2回は没入型VR機器(mediVR社製、Kagura ®)を用いてVR ガイド下でのリハビリテーションを行った。Kagura ®はヘッドマウントディスプレイを装着して仮想空間に没入し、提示される座標に対してリーチング動作を繰り返すことで姿勢バランス、重心移動能力および二重課題型の認知処理能力の向上を目的とした機器である。介入中は目標物の大きさ、距離、位置および数量を調節することで課題難易度を調整した。介入の結果、SIASは75点と変化はなかったが、TMT-Aは85秒、TMT-Bは134秒、CAT視覚性末梢課題②は48秒と各テストの所要時間短縮を認めた。</p><p>【結論】</p><p>VRリハビリテーションは没入感に優れており、注意障害に対して適したアプローチである可能性がある。今回、通常のリハビリテーションと併用したことで本症例において注意障害の改善が得られたと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本報告はマッターホルンリハビリテーション病院倫理審査委員会の承諾を得られた(承認番号:MRH22001)同意説明文書および口頭による十分な説明を行い、研究対象者の自由意志による同意で行った。</p>
収録刊行物
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- 日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
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日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 1.Suppl.No.2 (0), 21-21, 2022-12-01
日本予防理学療法学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390859304113660032
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- ISSN
- 27587983
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可