高齢者の介護予防を目的としたWeb会議システムによるアクティブラーニング型健康教育の実行可能性

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>ICTを活用したヘルスケアサービス(e-Health)は、距離的制約からの解放などの様々なメリットから、予防・健康増進分野での報告が急増しているが、65歳以上の高齢者における適用可能性は明らかでない。我々は過去に、健康行動の変容に向けて、アクティブラーニングを健康教育に応用し、高齢者を対象としたランダム化比較試験で身体活動・機能の改善を報告した。本研究の目的は、アクティブラーニング型健康教育をWeb会議システムにより実施し、オンラインでの実行可能性を検証することである。従来のICT介入は、情報提供やコーチングなど「介入者から対象者」の関係性で完結することが多い。これに対して本研究のプログラムは、「対象者間」の交流による相互作用や受け入れやすさの向上を狙いとしており、更なるデジタル化の進展が見込まれるポストコロナ社会における新しい介護予防への寄与が期待できる。</p><p>【方法】</p><p>対象はPCを所有し、Eメールの利用が可能な65歳以上の地域在住高齢者16名とした。除外基準(認知障害・運動に制限をもたらす疾患)の該当者はいなかった。対象者は、Web会議システム(zoom)の使用に関する説明を受けた後、週1回90分、12週間の運動・栄養・知的活動、および高齢期の健康をテーマとしたオンライン学習プログラムに自宅から参加した。各課題について、『宿題→グループワークによる発表・共有→実行計画→日常生活での実践』を一連の流れとして、行動変容を促した。受容性(Acceptability)の評価として、介入後のアンケート調査により、5段階のリッカート尺度を用いて、満足度および「健康づくりに役立ったか」を聴取した。副次アウトカムとして、身体活動を活動量計で測定した歩数と中強度以上の活動により、身体機能を通常・最大歩行速度により、認知機能を処理速度(digit symbol coding subtest)および言語流暢性により介入前後に評価し、対応のあるt検定を用いて比較した。</p><p>【結果】</p><p>16名(平均72.4歳、男性7名)全員が介入を完遂した。14名(87.5%)が12回全てに参加し、全員が全ての宿題を提出した。教室中の事故などの有害事象は発生しなかった。満足度は、8名(50%)が大変満足、8名(50%)がやや満足と回答した。「健康づくりに役立ったか」の質問には、8名(50%)がとてもそう思う、8名(50%)がややそう思うと回答した。歩数、中強度以上の活動、通常・最大歩行速度、処理速度に有意な改善が認められた(p<0.05)。</p><p>【結論】</p><p>オンラインのアクティブラーニング介入の受容性は良好であり、アクセスの不良な過疎地域や感染症が流行する状況において、対面での介入の代替手段となりうることが示唆された。今後、対照群を設けた研究デザインや持続効果の検証が必要であるが、本研究の結果より、Web会議システムによるアクティブラーニング型健康教育の実行可能性が示された。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は、対象者に研究の目的や内容、個人情報の保護について口頭と書面にて十分に説明した上で同意を得た。富山県立大学・人を対象とする研究倫理審査部会の承認を受けて実施した(番号:第R2-4号)。</p>

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