地域在住高齢者における筋量、握力、認知機能が社会的フレイルの変化におよぼす影響

DOI
  • 谷口 善昭
    鹿児島大学大学院 保健学研究科 鹿児島医療技術専門学校
  • 中井 雄貴
    第一工科大学工学部 機械システム工学科
  • 赤井田 将真
    鹿児島大学大学院 保健学研究科 鹿児島大学医学部 保健学科
  • 立石 麻奈
    鹿児島大学医学部 保健学科
  • 木内 悠人
    鹿児島大学大学院 保健学研究科 国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 予防老年学研究部
  • 牧迫 飛雄馬
    鹿児島大学医学部 保健学科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>フレイルは、身体的、精神・心理的、社会的といった多様な側面を持ち、可逆性を有することが知られている。社会的フレイルは身体・認知機能の低下より先行して起こるとされているが、社会的フレイルの変化に対して身体機能や認知機能が影響をおよぼす可能性がある。本研究は、地域在住高齢者を対象に筋量、握力、認知機能が社会的フレイルの変化におよぼす影響を調査することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>本研究は、2018年および2019年の地域健康チェック(垂水研究)の両方に参加した65歳以上の高齢者のうち、1回目の測定から2回目の測定まで8~16ヵ月経過(平均345.7±47.9日)している者を対象とした。さらに主要項目に欠損がなく、要介護認定を受けている者を除外した422名(平均年齢 73.8歳、女性64.2%)を解析した。社会的フレイル判定は5 項目(独居、昨年より外出頻度の減少、友人の家を訪ねていない、家族や友人の役に立っていない、誰とも毎日会話をしていない)にて回答を求め、該当数が1項目以下をロバスト、2項目以上を社会的フレイルとした。筋量は、生体電気インピーダンス法にて測定し、四肢骨格筋指数が男性7.0 kg/m 2、女性5.7kg/m 2未満を筋量低下とした。握力は、男性28kg、女性18kg未満を 握力低下とした。認知機能は、NCGG-FATで記憶、注意機能、実行機能、情報処理速度を測定し、年齢と教育歴を考慮した標準値より1.5SD以上の低下を1つ以上の領域で認めた者を認知機能低下とした。</p><p>【結果】</p><p>ベースライン時に社会的フレイルがロバストであった者(369名)のうち、社会的フレイルに移行した割合は11.1%であった。また、ベースライン時に社会的フレイルであった者(53名)のうち、ロバストへ改善した割合は34.0%であった。従属変数をロバストからの低下の有無、独立変数を筋量低下、握力低下、認知機能低下としたロジスティック回帰分析の結果、筋量が低下している者はロバストから社会的フレイルへ移行する可能性が高いことが示された(調整済オッズ比2.19、95%信頼区間1.11-4.29、共変量:年齢、性別)。従属変数を社会的フレイルからの改善の有無としたロジスティック回帰分析では、すべての独立変数に有意差は認めなかった。</p><p>【結論】</p><p>約1年間において、ロバストから社会的フレイルに移行した者は、筋量が低下している者が多く、筋量を高めておくことは社会的フレイルの予防につながる可能性がある。また、社会的フレイルからロバストへ改善した者と社会的フレイルのままだった者では、筋量・握力・認知機能に差がみられず、理学療法においても心身機能に対するアプローチだけでなく、社会的なつながりを促すことによって、社会的フレイルを改善できるかもしれない。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>鹿児島大学疫学研究等倫理委員会の承認(170351疫)を得て実施した。ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には研究内容について口頭と書面にて説明し同意を得た。</p>

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