理学療法士による安全衛生対策実施状況と課題およびその解決策について
説明
<p>【はじめに、目的】</p><p>近年、様々な業種において転倒や腰痛といった行動災害による労働災害が増加傾向にある。その中で、日頃、転倒予防や腰痛対策に取り組むことの多い理学療法士はこのような労働災害の防止に寄与できるのではないかと考えた。そこで、我々は理学療法士を対象に所属施設における転倒発生状況のアンケート調査と好事例施設への聞き取りを行い、理学療法士が所属施設の転倒災害を認知できる機会が限られている背景があると推察されると昨年報告をした。本研究は、アンケート調査と好事例施設への聞き取りから、理学療法士の安全衛生対策への関心の程度や安全衛生対策に関わるための課題、解決策を検討した。</p><p>【方法】</p><p>公益社団法人日本理学療法士協会に登録している理学療法士施設の代表者15,185名へアンケート調査の協力依頼メールを送付した。分析項目は、安全衛生対策への関心の有無、実際の関わりの有無、転倒災害対策状況とした。また、理学療法士による転倒災害対策実施施設の中から、好事例として施設5件に聞き取り調査を行った。</p><p>【結果】</p><p>937名から回答を得た。「職場の安全衛生対策に関わりたい」との回答は691名(74%)であった。その中で現在関わりを持てていない人は325名(47%)であった。理由は「業務として認められていない」、「必要とされていない」、「やり方がわからない」が多かった。一方、安全衛生対策実施施設での転倒災害予防策は「通路の整理」や「照明の整備」が多かった。好事例施設では安全衛生対策担当部署からの要望により取り組みを開始し、取り組み前後の効果を数値で示すことで、必要性が認識されてきたとの回答も得られた。</p><p>【結論】</p><p>本調査の結果、安全衛生対策に関わりたい理学療法士は一定数いるが、ニーズがない、やり方がわからない等により関われていない現状も明らかとなった。一方、安全衛生対策実施施設における実施内容は、すぐにでも取り組める内容も多く、好事例施設では安全衛生対策担当部署からの要望で関わり始めた施設が多かった。以上のことから、まずは自部署だけでもできる取り組みから行い、安全衛生対策担当部署と連携を図り、自施設の労災の有無などの情報収集を行うことで、理学療法士の存在を認識してもらう。また、取り組み前後の効果を客観的に示すことで業務として認めてもらうよう働きかけていくことの必要性が示唆された。</p><p>なお、これらへの対策として、日本産業理学療法研究会では、本調査結果や好事例集をホームページで公開した。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は大阪急性期・総合医療センターの倫理委員会にて承認を得て実施した(番号:2020-072)。対象者には、研究の説明、同意書、倫理委員会の承認などを含むアンケート調査の協力依頼についてメールを送付し、回答による同意を得た上で実施した。</p>
収録刊行物
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- 日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
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日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 1.Suppl.No.2 (0), 118-118, 2022-12-01
日本予防理学療法学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390859304113707136
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- ISSN
- 27587983
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可