地域在住高齢者における社会的孤立状態の有無と生活機能の軌跡の関連:お達者研究

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>他者との関わりが客観的に減少している状態を表す社会的孤立は、要介護状態への移行、認知症の発症および死亡リスクの上昇といった高齢者における有害事象と関連することが明らかとなっている。よって社会的孤立状態にある高齢者の有害事象をいかに予防するかが重要である。地域在住高齢者における有害事象に関連する因子として、生活機能の低下が挙げられる。先行研究では加齢による生活機能の軌跡は報告されているが、社会的孤立者に特化した報告はなく、社会的孤立者における軌跡は不明である。そこで本研究では、社会的孤立状態の有無と生活機能の経年的な軌跡を明らかにすることとした。</p><p>【方法】</p><p>地域高齢者コホート「板橋お達者健診2011」の2012年から2021年の間に郵送調査に参加し、生活機能の評価を2回以上行えた4058名(女性54.9%、平均年齢71.4歳)を解析対象とした。社会的孤立はベースライン時に別居の家族・親戚および友人・近所の人との交流頻度で評価を行い、先行研究から交流頻度が週1回未満の場合を社会的孤立状態と定義した。生活機能は老研式活動能力指標で評価した。社会的孤立状態の有無による生活機能の経年的な変化の違いを検討するために、老研式活動能力得点を従属変数とした線形混合効果モデルを用いて、社会的孤立状態の有無と時間の交互作用項における統計学的有意性を検討した。また老研式活動能力指標の下位項目得点においても同様の検討を行った。</p><p>【結果】</p><p>社会的孤立状態にある対象者の割合は21.9%であった。対象者全体のベースライン時の老研式活動能力得点は11.8±1.8点であった。2群間の比較では、社会的孤立状態にある高齢者は社会的孤立状態にない高齢者と比較して、低値(10.6±2.2点 vs.12.1±1.5点)を示した。経年的な変化に着目すると、社会的孤立状態にある高齢者は、社会的孤立状態にない高齢者と比較して、経年的に老研式活動能力指標得点が低下し、有意な交互作用を認めた(-0.04点/年、95% 信頼区間:-0.06~-0.01. p for interact=0.02)。下位項目得点では、手段的日常生活活動と知的能動性に関しても同様に交互作用項において統計学的有意差を認めた。一方で、社会的役割に関しては、交互作用項に統計学的有意差は認められなかった。</p><p>【結論】</p><p>社会的孤立状態にある高齢者は経年的な生活機能の低下が大きかった。この低下は手段的日常生活活動ならびに知的能動性の項目が低下することによるものであった。社会的孤立状態にある高齢者の手段的日常生活活動ならびに知的能動性の低下を予防する取り組みが重要である可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,東京都健康長寿医療センター研究所の倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号R21-033).また,本研究の対象者には書面にて研究目的および内容について説明し,研究協力については書面による同意を得た.</p>

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