食道癌への胸腔鏡下胸部食道切除術を導入した2症例の検討

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抄録

進行食道癌の治療は,根治性と再発リスクを考慮した手術が必要であり,根治手術は頸部,胸部,腹部の三領域の郭清が必要で,他の消化器癌手術と比較し高侵襲であり術後合併症や機能障害が問題となる.開胸,開腹による食道切除術は,胸壁への手術侵襲や術後疼痛の影響で,呼吸機能低下や炎症の遷延を来たし,重篤な合併症が引き起こされる可能性が高い.根治性を保ち低侵襲化を図るため内視鏡下手術が導入され,国内の食道切除術は約60 %が胸腔鏡や腹腔鏡を用いて施行され,鉗子操作による可動制限を改善するために様々な工夫がされている.また,近年ではロボット支援下食道切除術も保険適応となり,さらに低侵襲化が進んでいる.周術期管理においては栄養管理,理学療法介入など多職種との連携をとり合併症の低減とQuality of Life(QOL)の改善が図られている. 今回,食道癌に対する低侵襲手術として,2症例に胸腔鏡下食道切除術を施行した.胸部操作において,鉗子操作の制限を補うべくテーピングを用いた術野展開を行い,腹部操作では,胃管を愛護的に把持し,上腹部切開創をより縮小させた用手補助による胃管作成を施行した.また,周術期経腸栄養を可能にするため術中に腸瘻造設を行った.症例1,2における手術時間はそれぞれ505分,551分で,胸腔操作時間は243分,250分であった.入院期間は26日,21日であった.周術期合併症は,一時的な反回神経麻痺のみで約3ヶ月で改善した.また,術前Prognostic nutritional index(PNI)値から合併症および予後予測し栄養管理を十分に行い,経過とともにPNI値は改善傾向を認めた. 胸腔鏡下食道切除術の導入のために,事前に手術操作の討論を手術スタッフで行い,鉗子制限を補うテーピングを用いることで円滑な手術進行が可能となり,また,術後早期の栄養管理介入,理学療法介入を行うことで円滑な術後経過を得ることができた.

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