放射線による次世代影響不安と知識に関する解析:福島県全域に対する「健康と情報についての調査」回答結果を用いて

  • 廣田 誠子
    広島大学原爆放射線医科学研究所計量生物研究分野
  • 中山 千尋
    福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座
  • 吉永 信治
    広島大学原爆放射線医科学研究所計量生物研究分野
  • 森山 信彰
    福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座
  • 安村 誠司
    福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Relationship between radiation knowledge and radiation effect anxiety on the next generation: An analysis of a questionnaire survey disseminated to residents in Fukushima Prefecture
  • ホウシャセン ニ ヨル ジセダイ エイキョウ フアン ト チシキ ニ カンスル カイセキ : フクシマケン ゼンイキ ニ タイスル 「 ケンコウ ト ジョウホウ ニ ツイテ ノ チョウサ 」 カイトウ ケッカ オ モチイテ

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抄録

<p>目的 東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故を受け,福島県民の中には,放射線の次世代影響を心配する声が根強く残っているが,遺伝的影響を示す疫学調査はなく,この不安は解消されるべきである。他方,事故とは無関係に遺伝的影響を示す調査が存在すると誤解している人がいるという報告が存在する。そこで,本研究では,福島県内の住民を対象とした郵送調査により,放射線に関する知識の状態と放射線による遺伝的影響への不安との関係を調べた。</p><p>方法 20~79歳の2,000人の福島県民を対象に,健康状態を問うアンケート2016年8月に郵送により行い,861件の回答を得た。回答者は,次世代への放射線の影響に対する懸念度を4段階で選択し,放射線の影響や防護に関する5つの知識について,“正しい”,“正しくない”,“わからない”から選択して回答した。居住地域,家族構成,年齢,性別,学歴,情報・メディアを調整した上で重回帰分析を行い,不安の程度と知識問題の回答状況との関係を検討した。</p><p>結果 知識問題の正答率が高い人ほど,不安の程度が低いことがわかった。しかし,「わからない」の回答数は不安の度合いと無関係であった。また,放射線の体内残留を問うた質問や遺伝的影響に関する質問の正答率は,不安と負の相関があることが示された。後者の質問と細胞修復システムに関する質問に対する誤答は,不安と正の相関があった。また,線形閾値モデルに関連する別の質問での正答は不安と正の相関がみられたが,その相関は有意ではなかった。食品中の放射能基準値に関する設問は,いかなる関連性も示さなかった。</p><p>結論 これらの結果から,放射線に関する正しい知識を持つ人の数と,次世代への放射線の影響に対する不安の度合いとの間に関連があることが確認された。しかし,この関係やその強さは,具体的な知識の内容によって異なることがわかった。本研究の限界として,因果関係を証明することはできなかった。今後,前向き介入研究などのさらなる研究が必要である。</p>

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