ニホンザルの木ゆすり行動

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タイトル別名
  • Tree-shaking displays in a free-ranging, provisioned group of Japanese macaques (<i>Macaca fuscata</i>)

抄録

<p>ニホンザルの木ゆすりは良く知られた行動だが、他のマカク属の種も含めて、季節変化や性差、音声の有無などを定量的に分析した研究はほとんど行われていない。本研究では、2年8カ月の期間にわたって(167日間、約687時間)、餌場近辺に滞在中の勝山餌付け集団(岡山県真庭市)において記録したオトナオスによる842回の木ゆすりとオトナメスの72回の木ゆすりを分析した。また、交尾期においてのみ記録したオスからメスへの279回の目立つ攻撃行動(音声を伴う、20m以上を追いかけるなど)も合わせて分析した。中心部オスは、交尾期だけでなく、非交尾期も木ゆすりを行ったが、音声を伴う木ゆすりは交尾期に多く、非交尾期では少なかった。他方、周辺部オスや集団外オスの木ゆすりは交尾期に集中し、しかも、音声を伴った木ゆすりの割合が中心部オスよりも有意に高かった。餌場入場時や滞在中よりも、餌まき・退場場面(勝山集団では、餌まき後に退場することが多い)では、期待値よりも有意に高い頻度で木ゆすりが生じた。交尾期の木ゆすりは集中的に行われる傾向があった。交尾期のオスからメスへの目立つ攻撃行動は、中心部オスが行い、周辺部オスではほとんど記録されなかった。尚、28歳の高齢αオスは木ゆすりを全く行わず、目立つ攻撃行動もわずかであった。メスの木ゆすりのほとんどは、αメスとその娘たちによって、非交尾期に行われ、音声を伴うことはほとんどなかった。以上の結果から、目立つ攻撃行動をメスに行うことが困難であった周辺部オス、集団外オスは、音声を伴う木ゆすりを行うことで、メスに自身の存在を知らせ、引き付ける木ゆすりの効果(広告効果)をより高めていたと思われる。他方、中心部オスはメスに対する目立つ攻撃行動が可能だったので、音声を伴う木ゆすりの割合が低くなったと思われる。非交尾期の木ゆすりは、中心部オス及びαメスとその娘たちがほぼ独占的に行っていた事実から、彼らの社会的優位性を誇示する機能が主に推測される。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390859846096121728
  • DOI
    10.14907/primate.39.0_34_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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