嚥下障害に対する手術の基本―誤嚥防止術の基本 声門閉鎖術―

  • 古川 竜也
    神戸大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科

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抄録

<p> 重度の嚥下障害に対して嚥下性肺炎予防, 経口摂取の再獲得など生命予後と QOL の改善を目的として, 誤嚥防止手術が実施されてきた. 誤嚥防止手術の対象患者は高齢や既往・併存症のため臓器機能低下や創傷治癒不良因子を抱えていることが多く, 縫合不全や気管孔狭窄などが発生すると長期にわたり対応に苦慮することも経験される. 近年, 鹿野らの声門閉鎖術や香取らの喉頭中央部切除術など合併症の少ない術式が開発されて普及しつつある.</p><p> 当科では地域における頭頸部がん治療拠点であるため, 長期生存例が増えるに従い, 放射線治療を含む集学的治療後の嚥下障害に苦慮する症例も経験するようになってきた. これまで喉頭温存より経口摂取を優先する患者には,喉頭全摘出術を実施してきたが, 2014年より鹿野らの声門閉鎖術を主に実施している. 放射線治療例でも良好な創傷治癒が得られ, 対象疾患も拡大し, 術式に若干の改変を加えてきた.</p><p> 本稿では, 現在われわれが取り組む術式の実際について紹介する. 特に重視する点としては ① 甲状軟骨の切除範囲をできるだけ幅広くする, ② 声帯の切開ラインを輪状軟骨上縁に設定する, ③ 皮膚や気管の断端をトリミングして広く気管孔を形成する, などである. いずれも術後の感染や気管孔狭窄を減らすための取り組みであるとともに, 術式の普及に役立つポイントにもなるのではないかと考えている.</p>

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