高齢子宮体がん患者における治療強度が予後に与える影響

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タイトル別名
  • The prognostic impact of different treatment intensities in older patients with endometrial cancer
  • コウレイ シキュウタイ ガン カンジャ ニ オケル チリョウ キョウド ガ ヨゴ ニ アタエル エイキョウ

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抄録

[目的]高齢化率の増加に伴い高齢子宮体がん患者は急増しているが,高齢者のがん治療においては併存症などを考慮し医師の経験的な判断により治療強度を縮小することがある.そこで,当院で治療を行った高齢子宮体がん患者の背景や治療内容および治療強度による予後への影響について検討を行うこととした.2009-2018年に初回治療を行った70歳以上の子宮体がん患者を後方視的に検討した.子宮全摘出術,付属器摘出術,骨盤リンパ節郭清術を基本術式とし,再発中・高リスクと推定される症例では傍大動脈リンパ節郭清術を追加し,再発中リスク群以上では術後化学療法を行うことを標準治療と定義した.①手術を縮小した症例,②術後化学療法を省略した症例,③主治療を放射線治療とした症例を縮小治療群と定義した.[結果]対象は84例で,標準治療群は40例,治療縮小群は44例であった.病期や組織型の分布に偏りはなかったが,標準治療群で年齢が若く(p<0.0001),performance status 0-1の患者が多かった(p=0.003).早期癌においては,治療強度による全生存率に差はなかったが,進行癌においては,治療縮小群で予後不良な傾向を認めた.また,組織型の悪性度を加味すると,早期癌では高悪性度の組織型であっても治療強度の生存への影響はなかったが,進行癌においては,高悪性度の組織型では,治療縮小群は有意に予後不良であった(p=0.03).[結論]高齢子宮体がんにおいて,約半数に何らかの縮小治療が行われている実態が明らかとなった.早期癌では組織型の悪性度によらず治療強度が予後に与える影響は少ないことがわかった.今後は,積極的な治療に適合する患者を事前の高齢者機能評価によって,適切に抽出することが課題となってくると考えるが,今回の検討は,高齢者の生活機能をも維持した治療選択において治療適応判断の一助となるものと考える.〔産婦の進歩75(3):241-248,2023(令和5年8月)〕

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