地域で生活する認知症高齢者が混乱する環境要因と対応

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  • The environmental factors of BPSD for community dwelling older people with dementia, and home visiting care professionals’ specific ways to handle BPSD.

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抄録

【目的】訪問看護師・訪問介護員が把握する認知症高齢者が混乱する環境要因と対応方法の実態を明らかにする。 【方法】東京都と青森県の86名の訪問看護師・訪問介護員を対象として、質問紙調査を実施した。1人につき最大2名の利用者の情報を依頼し、136事例の回答が得られた。 【結果】混乱した場所はリビングが78件(57.4%)と最も多かった。混乱の原因については、複数回答の選択肢の設問では、すべての回答が1割未満であり多岐に渡っていた。自由記述において、分析に十分な回答があったものは124事例(91.2%)であった。124例の混乱する要因を分類したところ、住環境関連要因19件、生活関連要因は77件、認知機能関連要因が28件であり、環境に関連する住環境関連要因と生活関連要因について示した。環境関連要因では、“家電/調理器具の取り扱い”が最も多く11件で、真冬にストーブを使用しない、近くにストーブを置いて水疱ができるなど、身体への危険が推測される事例であった。“トイレの設備使用”に関する混乱は6件であった。生活関連要因 では“物の紛失と捜索”が最も多く16件あり、紛失物は財布、通帳、かばんなどの貴重品が15件を占めていた。一緒に探し、本人が見つけるよう誘導するなどの工夫がなされていたが、こうした対応では不十分で、後見人をつけたり、入浴時にかばんを本人から見えるところに置くという具体的な対応で解決できていた。 【考察】訪問看護師・訪問介護員が認識する認知症の人が混乱する要因は、住環境関連要因についての記述が少なく、危険をともなう暖房機器および不潔に関連するトイレの使用が中心であった。先行文献で指摘されている光や視覚に関する記述はほとんどなく、専門職が意図的に観察し環境調整につなげる必要がある。 【結論】対応に困る場面や危険に迫られる場面での混乱要因は把握され対応がなされているが、本人の感覚にもとづく困りごとという視点では混乱要因は把握されない可能性がある。

収録刊行物

  • 認知症ケア研究誌

    認知症ケア研究誌 6 (0), 1-12, 2022

    社会福祉法人 認知症介護研究・研修東京センター

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