褐毛和種における<i>BoLA-DRB3</i>遺伝子の多様性解析

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  • Genetic Diversity of <i>BoLA-DRB3</i> in Japanese Brown Cattle
  • 褐毛和種におけるBoLA-DRB3遺伝子の多様性解析
  • カツモウ ワシュ ニ オケル BoLA-DRB3 イデンシ ノ タヨウセイ カイセキ

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抄録

<p>牛伝染性リンパ腫(Enzootic Bovine Leukosis : EBL)は,牛伝染性リンパ腫ウイルス(Bovine Leukemia Virus : BLV)に起因する牛の悪性リンパ腫である。これまでに,ウシの主要組織適合遺伝子複合体(Major Histocompatibility Complex : MHC,ウシにおいてはBovine Leukocyte Antigen : BoLA)のDRB3領域におけるアリルタイプが感染症の抵抗性や感受性に関連していることが報告されている。褐毛和種は集団規模が小さいという遺伝的な背景から,他の品種と比較して,特定の疾病に対して異なる感受性を示す可能性がある。そこで本研究では,熊本系褐毛和種および高知系褐毛和種において,BoLA-DRB3遺伝子の多様性を解析し,その遺伝的構成を明らかにした。</p><p>褐毛和種184頭のBoLA-DRB3遺伝子のアリルタイピングの結果,熊本系褐毛和種および高知系褐毛和種でそれぞれ16および13種類のアリルが検出された。アリル頻度をもとに褐毛和種の平均ヘテロ接合度の観察値(Ho)およびその期待値(He),さらにそれらの値を用いた集団内の近交の程度を示すFisを解析したところ,両集団間でBoLA-DRB3の多様性が異なることが示された。また,BoLA-DRB3遺伝子のアリル頻度を基に集団間の近交の程度を示すFstを求めたところ,熊本系および高知系褐毛和種の集団は,黒毛和種,日本短角種,ホルスタイン種およびジャージー種の集団との遺伝的距離よりも,フィリピン在来種およびミャンマー在来種の集団との方が近かった。さらに,BLVに感染した際の低プロウイルス量と関連すると報告されているアリルを少なくとも一つ以上保有していた個体の割合は,熊本系褐毛和種においては15.7%(127 頭中20頭),高知系褐毛和種においては63.1%(57頭中37頭)と有意な差が認められた。今後,BLV感染個体ごとにBoLA-DRB3遺伝子の各アリルタイプとプロウイルス量を直接評価する必要がある。また,国内で飼養されている他品種と比較すると,熊本系褐毛和種では感染牛のプロウイルス量が低いとされていることから,当該品種についてはアリルタイプに基づくものとは異なる,別のプロウイルス量制御機構が存在する可能性についても検証していく必要がある。</p><p>以上のBoLA-DRB3遺伝子の多様性やアリル頻度の解析結果から,褐毛和種は和牛の中でも黒毛和種や日本短角種とは違った遺伝的背景を持っており,集団が小さいながらもBLVへ感染した際のプロウイルス量に関連するアリルを保有していることが明らかとなった。今後,褐毛和種においてプロウイルス量とBoLA-DRB3との関連を解析することにより,本品種におけるBLVの感受性を明らかにする必要がある。</p>

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