アンモニア利用に係るカーボンニュートラルに向けた取り組み

  • 渡邊 和宏
    株式会社IHI カーボンソリューションSBU開発部

書誌事項

タイトル別名
  • Initiatives for Carbon Neutral Society in the Use of Ammonia

抄録

火力発電でのCO2ゼロエミッションに向けてCO2を排出しないカーボンフリー燃料への転換を進める必要がある。その一つとして有望なものがアンモニアである。本報では石炭火力発電用ボイラおよびガスタービンにおけるアンモニア利用技術の開発動向を紹介する。<br>石炭火力発電用ボイラでは石炭に対して発熱量ベースで20%混焼する技術開発を行なってきており,実証段階に来ている。開発段階では窒素酸化物(NOx)と灰中未燃分の抑制が重要課題であったが,化学反応モデル(CHEMKIN)を用いてアンモニアの投入位置を検討した。その結果,燃焼火炎内(Flame zone)である高温の還元性領域にアンモニアを入れた場合がNOx値,CO値が共に最小となることを確認した。この結果をもとにバーナ開発をおこない,IHIの大規模燃焼試験炉で燃焼試験を実施した。アンモニア20%混焼時においてNOx,灰中未燃分を石炭専焼時と同程度まで低減することができることを確認した。アンモニアのガスタービンでの利用については,従来の気化したアンモニアガスを燃焼させる方式から変更し,液体アンモニアをガスタービン燃焼器に直接噴霧して利用する技術の開発に取り組んでいる。液体アンモニアは気体アンモニアと比較してアンモニア気化器,アキュムレータが不要であり,シンプルな供給系でガスタービンに供給することができ,アンモニア供給量を増加させるためのコストを低減できる。またガスタービン運用のメリットとして,アンモニア気化器の暖気が不要であり,ガスタービンの負荷変動への対応が容易となる。一方で液体アンモニアが燃焼器内で蒸発するため,局所的な火炎温度の低下による失火や,未燃アンモニアや温室効果ガス(GHG)の一つである亜酸化窒素(N2O)の排出が増加する可能性がある点が課題となる。新規開発燃焼器では専焼時に未燃アンモニアおよびN2Oの排出を抑制しGHG削減率99%以上を達成した。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 77 (8), 725-729, 2023

    紙パルプ技術協会

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