*<i>Guhyatattvaprakāśa</i> Ⅲ における「般若と方便の合一」――<i>Saṃpuṭodbhavatantra</i> Ⅱ-ⅱとの並行箇所を中心に――

書誌事項

タイトル別名
  • Integration of <i>Prajñā</i> and <i>Upāya</i> in *<i>Guhyatattvaprakāśa</i> III: Focusing on the Parallelism in <i>Saṃpuṭodbhavatantra</i> II-ii

抄録

<p> インド密教サンヴァラ系の一流派を形成したクリシュナーチャーリヤ(Kr̥ṣṇācārya)に帰される『グヒヤタットゥヴァプラカーシャ』(*Guhyatattvaprakāśa-nāma)はチベットの大学僧プトゥン(Bu ston)の言及により<究竟次第>を説く儀礼書として知られている.その多くの詩節はインド密教聖典の諸説を総合・折衷した『サンプタタントラ』(Saṃpuṭodbhavatantra)と並行しているが,それを指摘する論考は未だ発表されていない.本稿では同書の第3章に確認できる『サンプタタントラ』との並行箇所を俎上に載せ,その内容を明らかにするとともに,クリシュナーチャーリヤの方軌が同聖典にどのように包摂されたのか,周辺文献を考慮しつつ,その一端を窺うことを目的とする.</p><p> 同書の第2章および第3章では後期密教聖典に見られるevaṃ māya śrutam云々―いわゆるbhaga-type―の序文(nidāna)を音節や語単位に区分し,それぞれに教理的な解釈を施す仕方が説かれる.その仕方を手短に述べるならば,序文の音節や語を符丁としてそれらが持つ表面的な意味以外のさまざまな事物や現象を修行者に認識させる仕方である.彼は自身の教義やその実践を序文という諸々の象徴語によって表現したのである.</p><p> また重要な論点の一つは「般若(prajñā)と方便(upāya)」に代表される女性原理と男性原理の融和的合一であると考えられる.特に第3章では羯磨印(karmamudrā)との性的瑜伽によって獲得される般若智(prajñājñāna)がevaṃなどの符丁によって体得される仕方が説かれる.</p>

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参考文献 (1)*注記

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