熱傷創に対するNPWTの治療経験

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  • 森田 尚樹
    地方独立行政法人東京都立病院機構東京都立広尾病院形成外科

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タイトル別名
  • Negative Pressure Wound Therapy for Burn Wounds

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抄録

<p> Negative pressure wound therapy (以下NPWT) は, 1997年にArgenta LCら1)によりvacuum-assisted closureとしてその有効性が報告された. 本邦では2010年4月より保険収載され, 骨や腱の露出している症例や浮腫性肉芽, 植皮を前提とした創面に良好な移植床の形成, すなわちwound bed preparation (以下WBP) 目的に利用されてきた. DDBより深達度の深い熱傷では植皮術を前提に治療が進められることが多いが, さまざまな理由により焼痂をデブリードマン後, 良好な移植床を認めない症例も少なくない. また, 保険収載されていないものの, 植皮固定法としてのNPWTの利点も多く, 熱傷に対し非常に有用なデバイスであることが伺える. 今回当院で熱傷症例に対しNPWTを施行した症例を検証し, その有用性を報告する.<br> 対象は29症例で以下の4群に分け比較検証した.<br> 1. WBPと植皮固定ともにNPWTを使用したWBP+Graft群 (7例)<br> 2. NPWTによるWBP後に従来法で植皮固定したWBP+従来法群 (9例)<br> 3. NPWTによるWBPのみ施行後, 保存的に上皮化を認めたWBP 保存群 (4例)<br> 4. 良好な移植床を認め, 植皮固定のみにNPWTを施行したGraft群 (9例)<br> NPWTによるWBPを施行した理由は, 浮腫性肉芽8例, 腱・骨の露出が12例であった.<br> NPWTによる植皮固定症例 (WBP+Graft群, Graft群) の平均生着率は95.6%で, うち12例は全生着であった.<br> 移植床として適さない創面へのNPWT施行による良好なWBPや, 植皮固定法としても良好な結果が期待できることはすでに多くの報告がある. また, 植皮固定時も早期リハビリテーションが可能で, 高齢者の術後QOLの改善が期待できる. 今後, 高齢者人口の増加にともない増加が危惧される高齢者熱傷患者に対し有用な治療法の選択肢の一つとなりうる. </p>

収録刊行物

  • 熱傷

    熱傷 49 (3), 117-128, 2023-09-15

    一般社団法人 日本熱傷学会

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