令和5年度春季大会 高校生による研究発表最優秀賞を受賞して

  • 大澤 勝紀
    東京都立多摩科学技術高等学校 科学研究部生物班顧問

抄録

<p>受賞発表題目:「荒川水系黒目川におけるヌマチチブから発見されたHenneguya属粘液胞子虫の観察と寄生状況」</p><p>発表者:塚越遥人,水口勇人,安原颯大,後田 櫂(東京都立多摩科学技術高等学校)</p><p>1. 研究の素地</p><p> 東京都立多摩科学技術高等学校は2010年に開校した新しい学校である。将来の科学技術者などの理科系人材を育成することを掲げており,2年次からはBT(バイオテクノロジー),ET(エコテクノロジー),NT(ナノテクノロジー),IT(インフォメーションテクノロジー)の各領域に分かれ,研究を進めていく。3年次には卒業研究が始まり,各領域で数多くの生徒が発表会や学会に参加し,多くの実績を残している。また,進学指導推進校や英語教育推進校として理数教育,科学技術教育,英語教育,進学指導の取り組みに力を入れており,2022年度国公立大学合格者は現役生で56名を達成するまでとなっている。</p><p> 科学研究部生物班は創立当初より設置された部であり,現在では,数学班,生活科学班,化学物理班とともに科学研究部として活動している。生物に興味がある生徒が多く入部しており,2023年度の部員数は83名とここ数年で最大の人数となった。生物部というと少人数のイメージだが,強豪校の運動部にも負けない部員数を誇っている。それぞれが興味の対象や研究対象としている生物の類似性をもとに,グループに分かれており,〇〇屋と呼んでいる。魚屋,虫屋,両生類・は虫類屋など王道の生物を扱う生徒もいれば,藻屋,ゴキブリ屋などマニアックな屋を開拓しているものも多くいる。活動場所は生物室だけにとどまらず,近隣の野川をはじめ,三鷹市の丸池,高尾山,江ノ島,松輪と様々なフィールドで月1回以上の調査を行っている。こういった活動の中で各々が課題を発見し,研究を行っている。卒業生には,新種の生物を発見するなど活躍しているものもいる。採集や研究だけでなく,生き物の展示も行っている。文化祭では採集した生物や各自飼育している貴重な生物を展示し,尽きることない解説やめったにない体験ができるためか,非常に人気のコンテンツとなっている。</p><p> 生物班では自由な発想で研究することを推進しており,顧問はフィールドワークの機会を与え,テーマを設定することはしないようにしている。また,上下関係を大事にしており,卒業生や先輩がアドバイスをしてくれて,研究が進んでいく光景をよく目にする。卒業していく生徒は地方の大学へ進学する生徒が多く,それぞれが強い意志をもって研究に臨んでいく。好きなことを追い続けるその姿勢には,驚きを隠せない。このような土壌の中で育まれて本研究が出てきた。</p>

収録刊行物

  • 日本水産学会誌

    日本水産学会誌 89 (5), 489-489, 2023-09-15

    公益社団法人 日本水産学会

参考文献 (1)*注記

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