実務実習開始前の薬学生における感染性ウイルス疾患に対する抗体保有状況の調査

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  • Survey of Antibody Status against Infectious Viral Diseases in Pharmacy Students Prior to the Start of Practical Training

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抄録

麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎(ムンプス)といった流行性ウイルス感染症は、ワクチンによって予防可能な感染症である。医療従事者は感染性病原体に曝露する機会が多く、自らが感染源となる可能性があることから、自らの感染症に対する免疫を確認することが重要である。しかしながら、医療従事者だけでなく医療機関で長期臨床実習を行う医療技術者養成機関の学生も様々な患者に接することから注意が必要である。そのため、日本薬科大学では実務実習直前の4年次に流行性ウイルス感染症とB型肝炎の抗体価の検査を行っている。 2021年度から2023年度の日本薬科大学薬学科の新4年生全員を対象とした健康診断時の流行性ウイルス感染症とB型肝炎の抗体価を確認した。 流行性ウイルス感染症の抗体価を有する学生の割合は、水痘が80-90%と最も多く、風疹およびムンプスは35-50%程度であった。一方、麻疹(20%程度)やB型肝炎(0-3%)に対して十分な抗体を持っている学生はほとんどいなかった。 水痘の抗体が高い理由は、感染力とワクチンの定期接種が影響から感染による自然免疫が考えられた。その他の抗体価の低い結果は、一次ワクチン不全(ワクチン接種をしても抗体が得られない)と二次ワクチン不全(接種後の年次経過と共に一度獲得した免疫が減衰する)などの可能性が考えられた。また、B型肝炎においては、日本のワクチンの使用目的が関与している可能性が推察された。しかしながら、薬学生の流行性ウイルス感染症およびB型肝炎の抗体保有状況は良好とは言い難いため、医療関連感染対策として、ワクチン接種率の向上は重要であり、本人の意思に任せるだけでなく、薬学部としてもワクチン接種を促す活動が重要であると考えられた。

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