コロナ禍における乳癌術後寡分割照射を受ける患者の生命保険加入と生命保険金の給付状況に関する前向き調査

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タイトル別名
  • A Prospective Survey of Life Insurance Coverage and Benefit Status due to Hypofractionated Radiotherapy for Patients Undergoing Postoperative Radiotherapy for Breast Cancer at Corona Related Crisis

抄録

<p>【背景】放射線治療後の癌患者に対する生命保険金の給付は総線量を50 Gy以上とする規定があり、通院回数の負担を減らした総線量が50 Gy未満である乳癌術後寡分割照射に対する保険金の給付が行われていない実態が問題となっていたが、線量規定を撤廃した生命保険が2011年に初めて発表されてから約10年が経過した。本研究では当院の2010年度の報告と比較して、コロナ禍に乳癌術後寡分割照射を受ける患者の生命保険加入と生命保険金の給付状況を明らかにすることを目的とした。</p> <p>【方法】当院で乳房温存術後に総線量が50 Gy未満の寡分割照射を予定する患者を対象とした。調査項目は年齢、片道の通院時間、就労状況、放射線治療に関する特約の生命保険加入の有無、加入している民間医療保険会社もしくは共済名、保険金の給付の有無、加入している商品に対する現在の線量規定の撤廃の記載の有無とした。給付金申請に必要な診断書には線量は50 Gy相当の治療である旨を記載した。</p> <p>【結果】2021年8月から2022年4月にかけて45名の患者登録を行った。年齢中央値(範囲)は56歳(41−79)、通院時間は30分以内が5名(11%)、30分から1時間が33名(73%)、1時間から2時間が7名(16%)であった。就労している患者が29名(64%)であった。放射線治療に関する特約の生命保険に加入している患者は35名(78%)であった。生命保険に加入している35名中、民間医療保険会社への加入は32件、共済の加入は10件であった。のべ42件中、給付金受給の申請がなかった2件を除く40件のうち保険金の給付は32件(80%)で行われていた。2010年度の保険金の給付は9/24件(37%)であり、保険金の給付状況は有意に改善が見られた(p = 0.001)。線量規定の撤廃は現在15/17社(88%)で行われていた。</p> <p>【結論】現在は多くの民間医療保険会社および共済で放射線治療に関する線量規定の撤廃が行われており、乳癌術後寡分割照射を受ける患者の保険金の給付状況は2010年度と比較して改善していることが明らかとなった。この結果から、コロナ禍に通院回数を少なくすることで患者の身体的・精神的・経済的負担が軽減されていることが示唆された。</p>

収録刊行物

  • 生命保険論集

    生命保険論集 2023 (222), 349-374, 2023-03-20

    公益財団法人 生命保険文化センター

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390860609163983488
  • DOI
    10.51107/jilijournal.2023.222_349
  • ISSN
    24368628
    13467190
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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