発作抑制後も高次脳機能障害が残存した前頭葉焦点と考えられるてんかんの1例

DOI
  • 諸岡 輝子
    岡山大学病院医療技術部臨床心理部門
  • 岡 牧郎
    国立成育医療研究センターこころの診療部児童・思春期メンタルヘルス診療科 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科発達神経病態学 (岡山大学病院小児神経科)
  • 荻野 竜也
    福山市こども発達支援センター
  • 吉永 治美
    国立病院機構南岡山医療センター
  • 小林 勝弘
    岡山大学大学院医歯薬学総合研究科発達神経病態学 (岡山大学病院小児神経科)

書誌事項

タイトル別名
  • Pediatric epilepsy patient with a likely frontal lobe focus exhibiting higher brain dysfunction despite seizure control : A case report

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抄録

<p> 前頭葉焦点のてんかんの患者では,前頭葉における認知機能の低下がみられることが報告されているが,てんかん発作が抑制された後も長期にわたって認知機能の経過を詳細に追跡した報告は無い.症例は12歳8か月に前頭葉焦点と思われる発作が群発したてんかんを有する男子で,発症から約1年で発作はほぼ抑制され,その1年後に実施した検査では,脳波上のてんかん発射は消失し,全般的な知的能力は上昇していた.一方で,発作群発後の性格・行動変化に伴いRey-Osterrieth複雑図形の評価方法のBoston Qualitative Scoring System(BQSS)は低成績を示し,発症から約4年後の16歳8か月時に性格・行動が良くなるとともにBQSSは年齢相応の評価となった.BQSSは,視覚構成力および視覚性記憶力に加えて,課題に対する方略から前頭葉機能の特にプランニングを評価できる.前頭葉機能障害の患者はRey複雑図形の描写において方略が十分でないことが報告されている.本症例においてみられたBQSSにより評価される図形の描画方略の乏しさは,発作群発後の性格・行動変化で表された,プランニングなど前頭葉機能障害と関連がある可能性が示唆された.</p>

収録刊行物

  • 脳と発達

    脳と発達 55 (5), 356-362, 2023

    一般社団法人 日本小児神経学会

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