RNA 相分離による神経変性メカニズムの解明

DOI
  • 矢吹 悌
    熊本大・発生研・ゲノム神経 熊本大・薬
  • 塩田 倫史
    熊本大・発生研・ゲノム神経 熊本大・薬

抄録

<p>プリオン性タンパク質の一つである α-シヌクレイン (αSyn) の封入体はシヌクレイノパチー (パーキンソン病、レビー小体型認知症など) の神経病理学的特徴であるが、細胞内における αSyn 凝集機構は不明である。これまでに私達は、核酸高次構造であるグアニン四重鎖 RNA (RNA G-quadruplex; G4RNA) が遺伝性神経変性疾患である脆弱X関連振戦/失調症候群 (FXTAS) の発症に関わるプリオン性タンパク質のゾル-ゲル相転移を誘導し、凝集体形成を促進することを見出した (Sci Adv. 2021)。本研究では、G4RNA が αSyn ゾル-ゲル相転移を起こし、神経変性を誘導することを見出した。αSyn 凝集シーズである preformed fibril (PFF) を神経細胞に処置すると、リン酸化陽性の凝集体となる前に P 顆粒と呼ばれる液-液相分離 (LLPS) 体に局在することがわかった。精製 αSyn は分子クラウディング条件下において単独で液滴を形成し相分離するが、細胞から抽出した RNA を処置するとゾル-ゲル転移した。 RNA Bind-n-seq 及びゲルシフトアッセイ解析から、精製 αSyn は G4RNA に特異的に結合し、G4 構造を形成しない RNA にはほとんど結合しなかった。また、G4RNA を添加することで αSyn はゾル-ゲル相転移を引き起こし、凝集体を形成した。細胞実験において、αSyn は PFF 処置によりG4RNA と共凝集するが、それに先駆けてG4RNA 顆粒が細胞内で増加・肥大化していた。この結果は、細胞ストレスによる G4RNA 増加・会合がα-Syn 凝集の足場を形成する可能性を示唆している。そこで、培養神経細胞およびマウス黒質ドパミン神経細胞において光遺伝学的手法を用い G4RNA を会合させたところ、内在性 α-Syn が共凝集し、神経機能障害が誘導された。さらに、RNA 免疫沈降シーケンス解析により、αSyn 凝集に寄与する内在性 G4RNA を同定した。最後に、G4 作用薬は G4RNA による αSyn 凝集を抑制し、神経機能障害が改善した。これらの結果は、G4RNA 相転移が αSyn 凝集による病原性獲得のキーファクターであることを示唆している。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390860764351303808
  • DOI
    10.34597/ngpssuppl.2023.2.0_ag-3
  • ISSN
    24367567
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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