マーラー第1交響曲の第1楽章における管弦楽法と形式

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タイトル別名
  • Die instrumentale und formale Beziehung im Ersten Satz der Ersten Symphonie Gustav Mahlers
  • マーラー ダイ1 コウキョウキョク ノ ダイ1 ガクショウ ニ オケル カンゲンガクホウ ト ケイシキ

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抄録

グスタフ・マーラー第1交響曲の冒頭楽章の形式は,先行研究において一般的なソナタ形式に準拠しない点が多々あることが指摘されつつも,もっぱらソナタ形式として扱われている。そうした分析では,動機,主題,和声,調性といったソナタ形式分析のための基本的な要素が用いられ,様々な形式区分が提示されてきた。第1交響曲は自筆総譜成立から初版に至るまで少なくとも5度の改訂が行われ,その際に楽曲の長さ,動機や主題,調性といった要素が殆ど変化していない一方で,楽器編成や管弦楽法には大きく手が加えられている。しかし本楽章にまつわる従来の形式研究では,管弦楽法や自筆総譜成立後の改訂といった側面からの分析は十分におこなわれてこなかった。ゆえに本論文では,上記の問題点を踏まえた上で第1楽章の形式的特徴を解明することを試みた。分析のための主たる資料として用いたのは批判校訂版の総譜だが,必要に応じて改訂の各段階を示す自筆総譜や筆写総譜も参照した。これらの資料を管弦楽法の観点から形式分析・考察することで,以下の事実が明らかになった。1.ロマン派作品における形式の緩みや解消といった特徴が,マーラーの形式上の特徴にも対応していること。2.マーラーの管弦楽法上の改訂には,形式形成のための特定の響きを求めて行われたものがあること。個々の改訂事例の綿密な考察をつうじ,マーラーの管弦楽法上の実践が徐々に変化し,最終的に管弦楽法によって形式が形作られるに至った道筋も提示する。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 121 33-43, 2023-06-20

    京都大學人文科學研究所

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