脳裏に音楽が鳴り響くということ --シェーンベルクとウェーベルンの作曲プロセスによせて--

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タイトル別名
  • “Spannung von Vorstellung und Unabsehbarem”: Zum Kompositionsprozess von Arnold Schönberg und Anton Webern
  • ノウリ ニ オンガク ガ ナリヒビク ト イウ コト : シェーンベルク ト ウェーベルン ノ サッキョク プロセス ニ ヨセテ

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説明

ダルムシュタットにおける講演「アンフォルメル音楽の方へ」(1961)の中で,アドルノは表現主義時代のシェーンベルクとウェーベルンの作品を,作曲の主体と素材の間の弁証法的関係の実現という点において,現代音楽の可能性を提示する理想像として捉える。その際,無調期以後の作曲プロセスに関するアドルノの議論は興味深い。彼によれば,作曲者自身にとっても,「無調や十二音技法による極めて複雑な総譜は,完全に適切な[音響的イメージ]の想像からは恐らく常に離れたものであった」という。しかしながら,アドルノにとって,これは作曲上の欠陥を意味するわけではない。というのも,作曲する耳が素材へと自己批判的に向かう限り,「[事前の]想像と予見不可能なものの間の緊張」は,それ自体が生産的な作曲原理として機能するからである。本稿では,アドルノの議論を踏まえ,シェーンベルクとウェーベルンの創作手法を比較・考察することを試みる。その際,とりわけ考察の対象とするのは,内的聴取 --すなわち脳裏に音像を思い描くというプロセスが両者の作曲において,どのような位置を担っていたかという問題である。議論の前半では,ウェーベルンの場合 --生涯に渡って内的聴取の重要性にこだわり続けたシェーンベルクとは異なり-- ピアノによって音像をチェックするという作業が,自由な無調期においてすでに作曲過程の不可欠な一部となっていたことを指摘する。その後,彼の《交響曲》作品21と《弦楽四重奏曲》作品28の創作プロセスを検討することで,ウェーベルンが音楽的着想を推敲するにあたってピアノが果たした本質的な意義を考察する。

収録刊行物

  • 人文學報

    人文學報 121 71-91, 2023-06-20

    京都大學人文科學研究所

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