メンタルヘルスにおけるω3系多価不飽和脂肪酸の役割

  • 浜崎 景
    群馬大学 大学院医学系研究科 公衆衛生学分野

書誌事項

タイトル別名
  • The role of omega-3 polyunsaturated fatty acids in mental health

抄録

<p>厚生労働省の「患者疾患」によると,「気分障害(躁うつ病を含む)」の受療率(入院+外来)が,1996年には48(人口10万対)だったのが2020年には94と,この四半世紀で倍に増えている.また,COVID-19の感染拡大の影響もあり,経済協力開発機構(OECD)の報告によると加盟国では軒並みうつ病および抑うつの有病率が増加しており,日本では2013年の調査で7.9%だった有病率が,2020年には17.3%まで上昇している.うつ病に対する治療はこれまで主として,薬物療法,心理療法,電気療法などであったが,普段の生活習慣(睡眠,食生活,運動等)の改善により,予防もしくは症状改善につなげられるという報告がここ10数年の間に増えてきた.さらに,食・栄養との領域ではω3系多価不飽和脂肪酸(以下ω3)の報告が多い.ω3は1970年頃のグリーランドにおける観察研究を発端に,当初は動脈硬化症に対する予防効果や改善効果が注目されていた.日本の臨床現場でも1990年頃からエイコサペンタエン酸(EPA)製剤が,2013年からはEPA+ドコサヘキサエン酸(DHA)混合製剤が,脂質異常症や閉塞性動脈硬化症に対する疾患に対して処方されるようになった.2000年頃からメンタルヘルス(うつ病や抑うつ)を対象とした観察研究や介入研究が報告されるようになり,動物実験等によりその機序も徐々に明らかになってきた.現時点では,観察研究では魚食・ω3摂取とうつとの関連は認められているが,介入研究のメタ解析結果からは,抑うつ症状に対して効果があるものとないものが混在しており,まだエビデンスとしては十分ではない.本稿では我々が得た知見を紹介するとともに,この分野に関する海外からの観察研究や介入研究の報告をメカニズムとともに紹介する.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 158 (6), 460-463, 2023-11-01

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (40)*注記

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