消化器がん幹細胞に発現するイオン輸送体の同定と新規標的治療の開発

  • 塩崎 敦
    京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器外科学
  • 工藤 道弘
    京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器外科学
  • 竹本 健一
    京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器外科学
  • 清水 浩紀
    京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器外科学
  • 小菅 敏幸
    京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器外科学
  • 大辻 英吾
    京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器外科学

書誌事項

タイトル別名
  • Identification of ion channel/transporter expression profiles in digestive cancer stem cells for novel targeting therapy

抄録

<p>近年,イオン輸送体が細胞生命機能維持に重要な役割をもつことが報告され,がんの治療標的としても注目されている.一方,がん組織は幹細胞能力とがん形成能をあわせ持つ少数のがん幹細胞により形成・維持されることが解明され,がんの増大・転移・再発への関与が報告されている.我々は,がん幹細胞におけるイオンチャネルの特異的高発現を同定するため,種々の消化器がん細胞株からがん幹細胞を抽出培養後,遺伝子発現の網羅的解析を行った.食道扁平上皮がんにおいては,Ca2+透過性陽イオンチャネルであるTRPV2のがん幹細胞特異的な高発現に着目し,その阻害薬であるトラニラストが,がん幹細胞においてより強い増殖抑制効果を示すことを明らかにした.トラニラストは抗アレルギー薬として,特に外科分野においてはケロイド・肥厚性瘢痕の予防・治療薬として広く臨床で使用されているが,そのがん幹細胞増殖抑制効果を新たに見出し報告した.この結果を受け,進行食道がん患者を対象としたトラニラスト併用化学療法のPhase I/II studyを特定臨床研究として開始している.胃がんにおいては,電位依存性Ca2+チャネル(CACNA2D1,CACNB4)のがん幹細胞特異的な高発現と,阻害薬であるアムロジピンやベラパミル(高血圧・狭心症治療薬,抗不整脈薬)のがん幹細胞増殖抑制効果を見出した.また,膵がんにおいては,電位依存性KチャネルのサブファミリーであるKCNB1,KCNC1,KCND1のがん幹細胞特異的な高発現と,阻害薬である4-アミノピリジン(多発性硬化症治療薬)のがん幹細胞増殖抑制効果について報告した.本総説では,我々の研究で得られた新知見を紹介し,がん幹細胞特異的に発現するイオン輸送体を標的とした新たな治療概念とその展望について概説したい.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 158 (6), 469-474, 2023-11-01

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (28)*注記

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