HAM患者レジストリ「HAMねっと」を用いたデータベース研究

DOI
  • 山野 嘉久
    聖マリアンナ医科大学脳神経内科学 聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター 聖マリアンナ医科大学臨床研究データセンター

書誌事項

タイトル別名
  • Database study using the HAM patient registry “HAM-net”

抄録

<p>HTLV-1関連脊髄症(HAM)は,進行性の歩行障害や膀胱直腸障害を来たす稀な難治性疾患である.HAMの治療はいまだ確立されていないのが現状で,これはHAM患者が様々な医療機関に点在し,その情報が集約されないことが原因となっている.</p><p>近年,患者レジストリのデータの重要性が広く認識されるようになってきており,レジストリにより収集したデータは,真の実態を示すリアルワールドデータとして考えられはじめている.そこで我々は,2012年から患者会と連携して全国的なHAM患者レジストリ「HAMねっと」の運営を開始した(UMIN000028400).HAMねっとでは,患者情報やHAMの症状などを1人の登録患者につき年に1回,電話による聞き取り調査を実施しているが,質の高い情報を高い充足率で継続的に得るために,調査担当者として,看護師・CRC等の医療知識を有するキュレーターを設けている.また得られた情報は,情報管理体制および情報の信頼性を高める工夫をしたデータシステムを使用している.これらHAMねっとの運営にかかわる業務全般について,手順書および運営マニュアルを整備することで,業務の標準化を図っている.</p><p>HAMねっとの運営により,HAMに関するリアルワールドデータが蓄積され,安定的な臨床情報の収集に成功し,経過や予後因子が解明した.しかしながら,患者の病状判断に重要な検査データが収集されていないという問題や,HAMの疾患活動性の判定や治療効果の評価に必要となる検査が保険未承認で実施できないという問題があることから,HAMねっとによる臨床情報の集積だけでなく,臨床情報にリンクした検体をあわせて収集する新HAMねっとに移行した(UMIN000039930).新HAMねっとでは,検体の提供に協力した主治医には,保険未承認の検査を研究で実施している.</p><p>以上のようにHAMねっとは我々研究者と患者を結ぶ強力なツールとして活用され,その存在価値を高めている.また現在,さまざまな難病研究班が運営するレジストリデータの統合を目指す「難病プラットフォーム」という取り組みも始動している.これにより,HAMのみならず我が国の難病全体が共通基盤のもと連携し,希少難治性疾患の制圧が可能になるものと期待される.</p>

収録刊行物

  • 保健医療科学

    保健医療科学 72 (4), 317-326, 2023-10-31

    国立保健医療科学院

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861074218842752
  • DOI
    10.20683/jniph.72.4_317
  • ISSN
    24320722
    13476459
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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