三酸素同位体組成を用いた土壌由来一酸化二窒素の起源推定

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  • Tracing the source of soil N<sub>2</sub>O using triple oxygen isotopes

抄録

<p>一酸化二窒素 (N2O) は、二酸化炭素、メタンに次ぐ長寿命温室効果気体であり、最も主要な成層圏オゾン破壊物質である。近年大気中のN2O濃度は、年々増加しており、土壌中におけるN2Oの生成メカニズムやその時間変化を把握することは、土壌からのN2O放出量を削減する上で極めて重要である。N2Oの濃度観測だけでは、N2Oの起源推定は困難である。そこで、本研究はN2OのΔ17O値を用いて、土壌N2Oの起源推定に挑戦した。硝化反応で生成したN2Oであれば、そのO原子は大気中の酸素分子(O2)を起源としているので、O2と同様の低いΔ17O値(Δ17O = - 0.44‰)が期待される。一方、脱窒反応で生成したN2Oであれば、そのO原子は亜硝酸を起源とすることから、亜硝酸と同様の高いΔ17O値が期待できる。そこで本研究では、土壌より放出されるN2O、その直下の土壌を一年以上に渡ってサンプリングし、N2Oの放出フラックスとΔ17O や土壌中の亜硝酸のΔ17Oを分析した。その結果、観測点におけるN2Oの放出フラックスは、3.8 ± 3.1 μg N m-2 h-1となり、先行研究で報告されているのと同様の放出量を示した。晴天時に放出されるN2OのΔ17O値は、平均-0.32 ± 0.09 ‰となり、O2と同様の低いΔ17O値を示したため、N2Oの大部分が硝化によって生成していることが明らかになった。一方雨天時の放出フラックスは、有意に高くなり、Δ17O値も有意に高くなった(+0.12± 0.14 ‰)。このN2OのΔ17O値は、観測された土壌亜硝酸のΔ17O値(平均+0.23 ± 0.12 ‰)と近いため、降雨に伴って土壌N2Oの生成メカニズムが硝化主体から脱窒主体に移行したことがわかった。N2OのΔ17Oは、土壌N2Oの起源推定に有用である。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861305859587456
  • DOI
    10.14862/geochemproc.70.0_6
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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