移動過程に着目したランニングによる大学生の認識変容に関する研究(教)

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抄録

<p>学校体育における長い距離を走る運動は、学習指導要領において陸上競技領域の長距離走と体つくり運動の持久走に大別される。しかしながら、実際にそれらの運動に取り組む主体である学習者にとっては、同様の運動形態ゆえの混乱があると考えられる。とりわけ、それぞれの特性に対する認識が曖昧なまま、人格形成や体力向上といった運動の効果が強調された長い距離を走る運動を経験してきた大学生は、矮小化された長い距離を走る楽しさしか味わっていない可能性がある。転じて、注目すべきは移動過程にあると言えないか。例えば、Cook(2015)はランニングを無意味な移動性の形態と指摘している。陸上競技場を周回したり、街中の道に沿って走ったりすることは、一定の時間や距離を走るという目的や、目的地での行動以上の意味を有しているのである。そこで、本研究では大学生がスタートからゴールまで走る、その移動過程に着目した。具体的には、GPSを用いた移動過程のトラッキングとコースの創造を含むランニング(GPSアート)を通して、大学生がランニングの意味を生成・変容する過程を明らかにすることとした。</p><p>2023年2月にO県K大学で開講された集中授業の受講者の内、インタビューに応じた5名を調査対象とした。授業内で実施したランニングについて、半構造化面接によって録音データを収集した。その際、これまで調査対象者が体験してきた部活動や体育授業におけるランニングと対比させるよう促した。得られたデータは文字に起こし、M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を用いて分析した。その結果、移動過程そのものに注目したランニングは、大学生にとってランニング概念を拡張する機能を有しており、走者の視点だけでなく地図を見るような俯瞰的な視点を生じさせ、それに伴って新たなランニングの魅力を探究するモードを導く可能性があることが示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861305860218112
  • DOI
    10.20693/jspehssconf.73.0_89
  • ISSN
    24367257
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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