時代が求めるプロセス産業DX

  • 岩崎 哲嗣
    富士通株式会社 Enterprise事業本部 Process Division

書誌事項

タイトル別名
  • DX in the Process Industry as a Reflection of Contemporary Social Demands

抄録

我が国では国際競争力が低下し,DXをスピーディに進めることが期待されているが,PoC(概念実証)は行われるもののビジネス変革に容易に繋がらない。DXのスピードが上がらない要因には様々指摘があるが,本稿では価値創出の活動モデルが未確立である点が要因であり,更に真因はDXに関する先入観の作用にあると考え,その視点を元にプロセス産業61社100名とのDX企画段階の対話履歴を整理し確認した。<br>その際,会話で直接話題とした関心事項と前提となる観念を分けて変数とし,経営者やDX推進当事者の意識の分布を表す方法で行った。<br>その結果,情報処理活動の4階層(ビジネス,意思決定,データ活用,データ供給)のいずれにおいても,先入観の作用によりDX推進に関わる意識の偏りが生じている可能性が浮き彫りとなった。以下の各階層の前者の観念が意識下で採用されDX推進に影響を与えていると推定される。<br>・ビジネス層:価値は提供される(受けとる)vs共創する<br>・意思決定層:デジタル技術は対象物に適用するvs不確実な現実に直面する人に適用する<br>・データ活用層:データ活用はAIが答えを出すvs問題定義しモデルによりデータを要求する<br>・データ供給層:データは所与のものvs要求に対しデータ供給の改善に取り組むもの<br>以上を踏まえ今後DX加速に転じるには,要素技術適用に留まらず,いわゆる「攻めのアプローチ」を定式化し共有し続けることが必要かつ有効と考える。<br>プロセス産業は元来コントロールが難しい対象を扱い情報処理とデータ活用の可能性を切り開く歴史を築いてきた。攻めのアプローチにより本来のあり方へと回帰しDXを最大限に進めることを提言したい。<br>本稿では論旨と各企業の経営者とDX推進当事者の意識分布の検証結果を報告する(発表では攻めのアプローチの明細にあたる各企業での実践事例を報告)。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 77 (11), 1003-1008, 2023

    紙パルプ技術協会

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