サーモグラフィを用いた心筋保護時の心筋温冷却の検討

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  • Study on Myocardial Temperature Cooling during Myocardial Protection Using Thermography

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抄録

<p>[目的]心筋保護法において,心筋温度の管理は非常に重要である.心筋保護の効果判定として,非侵襲なサーモグラフィを使用して,心筋保護液の注入が正しく行われているかを確認すると同時に,当施設における心筋保護法の妥当性について検討した.[方法]2020年5月から2022年6月の心停止を伴う体外循環症例52例のうち,血液心筋保護であるMicroplegiaにて順行性心筋保護で心停止を得た10例を対象とした.心筋保護液の注入温は20℃とし順行性にて回路内圧300 mmHg未満,流量250~350 ml/分を維持した.心臓から80 cm離した位置より,サーモグラフィを用いて,心臓前面の心筋温を測定した.[結果]心筋保護開始前の心臓表面温度は32.5±1.0℃で,注入を開始してから,心停止を得たときの心臓表面温度は,27.4±1.3℃であった.すべての症例で,心停止時の心筋表面温度は視覚的に不均一であった.さらに注入を継続し,視覚的均一に最低表面温度に到達するまでの時間は平均342±23秒であった.心筋保護終了時の心臓表面温度は平均22.4±1.3℃であった.心筋保護液の注入を開始した際,心筋表面は,可視にて心筋表面は,脂肪より筋肉が速く冷却され,大動脈>心尖部よりの心筋>心基部の順に冷却された.術後経過は,EF・CKMB・カテコラミン使用量・抜管時間・術後入院日数・outcomeに関して,いずれの症例もおおむね良好であった.[結語]心筋保護液を注入する際,均一に心筋温を冷却するには,360秒程度の時間が必要であることが明らかになった.さらに,心基部の冷却を確認することで,全体が冷却されていると推察することが示唆される.不十分な心筋保護によるトラブルを回避するため,非侵襲で簡易なサーモグラフィを使用して心筋温を測定することで,心筋保護の効果判定の補助になることが示唆され,さらなる心筋保護の安全性を確立させることが期待できる.</p>

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