地形に起因する線状対流系の組織化構造の解明に向けた数値標高モデル感度実験

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  • Sensitivity Experiments of Digital Elevation Models: toward the Identification of Topographically Induced Self-organization Structure of Linear-shaped Convective Systems

抄録

<p>線状対流系を始め豪雨をもたらすメソ対流系の発生に際しては地形が重要な要因の一つと考えられている.しかし地域により異なる地形の起伏と風速場,および線状対流系の雨量分布の関係性は自明ではない.また筆者らはパターン解析として有用なマルチフラクタルを用いて対流系組織化機構の特徴の抽出に取り組んできた.そこで本研究では初期解析として,線状対流系3事例について異なる解像度のDEMを適用した実験を行い,地域ごとにモデル内の標高の変化に伴い線状対流系の雨量が変化するメカニズムの解析を行った.解析事例は1998年那須豪雨,2012年亀岡豪雨,2014年広島豪雨とした.DEMには解像度30 秒角(約1 km)のGTOPO30と1秒角(約30 m)のSRTMGL1を用意し,各事例に対して2つのDEMを適用した計6種類の実験を行った.数値実験には雲解像モデルCReSSを用いてすべての実験で水平解像度500 m,鉛直解像度を平均250 mとした. 3事例に共通して,積算降水量はGTOPO実験に比べてSRTMGL1実験の方が増加しており,特に山地の斜面や風下側でその傾向が顕著に見られた. 次に亀岡豪雨SRTM実験について対流圏下層の水蒸気フラックスを解析したところ,海上高度500 m付近ではGTOPO実験に比べて明瞭な増加傾向を示していた.GTOPO・SRTM実験の初期時刻における海上の風速・水蒸気混合比は同じ値であったことから,SRTM実験の水蒸気フラックスが増加する傾向はモデル内の地形表現の変化に伴うものと推測された.紀伊水道の両沿岸の斜面勾配が増大し,かつその北側の淡路島・和泉山脈で下層ジェットがせき止められる効果が実現し,同地域における水蒸気フラックスの増大につながったと考えられる. さらに局地的な地形の起伏と風速場の関係を記述するために,斜面勾配と水平風速の内積を用いた地形起因の水蒸気フラックスを定義した.亀岡豪雨においては六甲山や大阪北部の北摂山地で値が大きかった.これは対流系を構成するセルが活発に発生した領域と対応する.広島豪雨においても対流が活発に生じていた山口県岩国市付近や広島市周辺で値が大きく,かつ時間変化が明瞭に見られた. 今後はマルチフラクタルを援用しながら,線状対流系が発生する風速・水蒸気・熱力学場を分類し,特定の地域に見られるリスクや地域を超えた普遍性を追求したい.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861618045960192
  • DOI
    10.11520/jshwr.36.0_266
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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