日本におけるドラッグ・ロスの現状とその要因

DOI
  • 蜷尾 はるか
    筑波大学大学院人間総合科学学術院 第一三共株式会社 筑波大学医学医療系橋渡し・臨床研究学
  • 渡邉 真哉
    筑波大学つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO) 筑波大学附属病院脳神経外科 水戸協同病院脳神経外科
  • 中村 公香
    筑波大学大学院人間総合科学学術院 MSD株式会社 筑波大学医学医療系橋渡し・臨床研究学
  • 野中 孝浩
    大阪公立大学大学院医学研究科健康・医療イノベーション学
  • 橋本 幸一
    筑波大学つくば臨床医学研究開発機構(T-CReDO) 筑波大学医学医療系橋渡し・臨床研究学

抄録

<p>【目的】日本での新規医薬品開発において、かつて課題となっていたドラッグ・ラグは国際共同試験の実施の促進や、規制当局での審査期間短縮に向けた審査人員の拡充などにより,近年では縮小傾向にあると報告されている。一方で、海外製薬企業が日本での上市を予定せず新規医薬品が日本へ入ってこない状況を指す「ドラッグ・ロス」の問題が新たに顕在化しつつある。そこで、日本におけるドラッグ・ロスの現状とその要因の分析、及びそれらの結果を踏まえた今後の日本の医薬品開発における対策の考察を目的として本研究を実施した。【方法】欧米各極で承認されている国内未承認薬について、PMDA「未承認薬データベース(更新日2022年4月4日)」の記載及び各極のホームページの公表情報をもとに直近10年間(2013年~2022年)の国内未承認薬を特定し、国内未承認薬数の推移を調べた。また、欧米各極で新有効成分含有医薬品(NME)として承認された品目について、NME 数に対する国内未承認薬数の割合を算出し、経時的な国内未承認薬率を算出した。加えて、特定した国内未承認薬数に対して、欧米各極の承認取得時のピボタル試験(承認審査において中核とみなされた臨床試験)への日本及び中国の参加の有無、各極での承認取得企業における日本法人の有無、及び抗悪性腫瘍薬数の割合について、公開情報からデータを収集しそれぞれの項目について解析を行った。【結果・考察】欧米各極で承認されている直近10年間(2013年~2022年)の国内未承認薬数について、それぞれアメリカ食品医薬品局(FDA)承認済みである国内未承認薬数が232品目、欧州医薬品庁(EMA)承認済みである国内未承認薬数が148品目であった。各極における国内未承認薬数及び国内未承認薬数の割合の経時的な推移については、10年間を通してともに増加傾向にあり、国内未承認薬数の割合は2022年時点においてFDA承認済みの品目では70.3%、EMAで承認済みの品目では63.4%であった。また、国内未承認薬のうちの抗悪性腫瘍薬の割合について前半5年間と後半5年間の割合を比較したところ、欧米各極ともに増加している傾向がみられた。その他の項目についても解析を進めており、本学会で報告する予定である。【結論】経時的に国内未承認薬数及び国内未承認薬数の割合が増加していることから、日本のおけるドラッグ・ロスが進んでいる現状が示された。またその原因因子は現在解析中である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861692692666624
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-p-h3
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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