造血器腫瘍患者におけるポサコナゾール血中濃度に及ぼす影響因子の検討

  • 山田 孝明
    九州大学病院薬剤部 和歌山県立医科大学薬学部医療薬剤学
  • Belabbas Tassadit
    九州大学大学院薬学研究院臨床薬物治療学
  • 末次 王卓
    九州大学病院薬剤部
  • 廣田 豪
    九州大学病院薬剤部 九州大学大学院薬学研究院臨床薬物治療学
  • 森 康雄
    九州大学病院血液・腫瘍・心血管内科
  • 加藤 光次
    九州大学病院血液・腫瘍・心血管内科
  • 赤司 浩一
    九州大学病院血液・腫瘍・心血管内科
  • 江頭 伸昭
    九州大学病院薬剤部 和歌山県立医科大学薬学部医療薬剤学
  • 家入 一郎
    九州大学病院薬剤部 九州大学大学院薬学研究院臨床薬物治療学

説明

<p>【目的】</p><p>ポサコナゾールは、造血器腫瘍患者における深在性真菌症の予防及び真菌症の治療に適応を有するアゾール系抗真菌薬である。ポサコナゾールは、本邦では治療薬物モニタリング(TDM)の対象薬剤ではないが、海外では真菌症の発症予防としてトラフ値>0.7μg/mL、治療としてトラフ値>1.0μg/mLがそれぞれ推奨されている。一方、市販後の実臨床データを用いたポサコナゾールの薬物動態学的検討はほとんどなされておらず、血中濃度に影響する因子に関する情報は不足している。そこで本研究では、母集団薬物動態解析法を用いてポサコナゾール血中濃度に及ぼす影響因子を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>九州大学病院にて2021年7月から2022年11月までにポサコナゾール錠を内服した造血器腫瘍患者を対象とし、通常診療より得られた血液検体の残余を用いてLC-MS法によりポサコナゾール血中濃度を測定した。母集団薬物動態モデルの構築には、Nonlinear Mixed Effect Model(NONMEM)ver. 7.4を用いた。電子カルテより患者情報、検査値、診療記録を後ろ向きに抽出し、ポサコナゾールクリアランス(CL)に対する影響因子を探索した。なお、本研究は九州大学臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。</p><p>【結果・考察】</p><p>ポサコナゾール血中濃度130検体(28例)を用いて、母集団薬物動態モデルを構築した。最終モデルは、1次吸収過程を含む1-コンパートメントモデルで記述した。見かけのCL(CL/F)に影響する因子として、体重、血清総タンパク値、下痢が同定された。また、体重増加及び血清総タンパク値低下に伴いCL/Fが上昇すること、下痢症状を有する患者では正常便の患者と比較してCL/Fが平均26%高くなることが示された。造血器腫瘍患者では、化学療法による粘膜炎や造血幹細胞移植後の消化管移植片対宿主病により重度の下痢症状を呈することから、粘膜障害や腸管異常によるポサコナゾールの吸収不良が下痢によるCL/F上昇の要因となっている可能性が示唆された。</p><p>【結論】</p><p>実臨床データを用いた解析により、高体重、血清総タンパク低値、下痢によりポサコナゾール血中濃度が低下することが示された。これらの因子を有する造血器腫瘍患者では、TDMの実施が有用である可能性が考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861692692669312
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-o03-5
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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