薬物代謝酵素CYP3A4の概日リズム制御機構の解析
説明
<p>【目的】CYP3A4は臨床で使用されている薬物の約半数の代謝に関与する極めて重要な酵素である。CYP3A4の基質薬物の体内動態は、投薬時刻によって変動することが指摘されており、CYP3A4の発現および酵素活性に24時間を1周期とする概日リズムがあることが示唆されていた。過去に当研究室では、時計出力因子による転写制御によってCYP3A4の発現や酵素活性に概日リズムが生じることを明らかにしている。しかし、mRNAの発現リズムの振幅に対して、酵素活性のリズムの振幅が顕著に大きいことから、転写制御に加えて転写後の何らかの機構が相まって、酵素活性のリズムが形成されると考えていた。本研究では、転写後におけるCYP3A4の概日リズムの制御機構を明らかにするため、概日時計機構を再構築したヒト肝由来HepaRG細胞を用いて検討を行った。</p><p>【方法】本研究では、3次元条件下で2週間培養することで分化させたHepaRG細胞を用いた。HepaRG細胞に10 μMのForskolin (FSK) を2時間処置して概日時計機構の再構築を行い、ヒト肝細胞における遺伝子発現の概日リズムを観察した。</p><p>【結果・考察】3次元条件下で培養したHepaRG細胞では2次元条件下で培養したHepaRG細胞と比較して、主要な薬物代謝酵素やトランスポーターの発現は上昇したことから、CYPの機能評価に適していると判断した。この条件下においてFSK処置を行ったところ、CYP3A4のタンパク質発現および酵素活性には同時刻にピークを示す概日リズムが認められた。一方で、 CYP3A4 mRNAの発現には有意な概日リズムは認められなかったことから、翻訳またはタンパク質の分解過程などでの制御がCYP3A4の概日リズムの形成に関与していることが示唆された。</p><p>【結論】本研究により、CYP3A4の酵素活性の概日リズム形成について新たな知見を得ることができた。今後、その制御機構について解析を行うことで、CYP3A4基質薬物の体内動態おける時刻変動のメカニズムが解明できると考えられた。</p>
収録刊行物
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- 日本臨床薬理学会学術総会抄録集
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日本臨床薬理学会学術総会抄録集 44 (0), 1-C-O07-2-, 2023
一般社団法人 日本臨床薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390861692692678144
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- ISSN
- 24365580
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可