遺伝子細胞治療の有効性をどう評価すべきか?
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- 米満 吉和
- 九州大学大学院薬学研究院 バイオ医薬創成学
説明
<p>2014年11月に医薬品医療機器等法(改正薬事法)が施行、再生医療等製品を対象として条件及び期限付製造販売承認制度(いわゆる早期承認制度)が導入された。これは患者にとって画期的治療技術へのアクセスのハードルを下げるための規制緩和として期待され、更に遺伝子治療・細胞治療(法的区分においては再生医療等製品)の開発を手掛けるスタートアップは、これまで小規模な臨床試験だけで早くから販売に到達可能となることを期待して来た。その後9年が経過し複数の製品が早期承認されたものの、その売上高は限定的であり、各社の収益に貢献しているとは言い難い。結局のところ、(1)有効性が「推定されている(確定されていない)」に留まっている再生医療等製品について、医療現場が積極的に使用する動機になりにくい、(2)早期承認レベルのデータで、特に欧米で承認を受けることは概ね不可能である、などの理由が想定される。そのため、最近では製薬企業を中心に、「一定規模の比較試験で明確な有効性を証明し、医療現場で使ってもらう素地を固めることが、結局は一番近道ではないか」という主張も聞かれるようになって来た。以上のように、現在早期承認制度については、議論を残したまま過渡期に入っている。一方で一定規模の比較試験を組むことに困難が伴う場合、つまり自家細胞の加工を要する製品や、遺伝性疾患などの極希少疾患を対象とする製品の場合、早期承認制度は依然として重要な制度である。これらはまさに遺伝子治療・再生医療にあてはまる場合が多いが、ではそのような場合にはどのようなデータを以て「有効性を推定」することが可能になるだろうか?本講演では、我が国における以上の経緯を整理した上で、2017年に米国FDAで制定されたRMAT指定制度、そしてそのドラフトガイドラインの記載内容と我が国での実例との比較をすることにより、早期承認制度のあるべき姿について議論したい。</p>
収録刊行物
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- 日本臨床薬理学会学術総会抄録集
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日本臨床薬理学会学術総会抄録集 44 (0), 2-C-EL06-, 2023
一般社団法人 日本臨床薬理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390861692692779392
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- ISSN
- 24365580
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可