GPR68を標的とした慢性腎臓病誘発性の心炎症・線維化抑制化合物の探索

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<p>【目的】慢性腎臓病 (CKD)は様々合併症を伴うが、なかでも心不全の発症リスクは非常に高く、重度のCKD患者の主な死亡原因となっている。しかしながら、CKD時の心不全を抑制する有効な治療法は確立されていない。一方、当研究室では、CKD時の心臓の炎症と線維化にマクロファージに高発現するG protein coupled receptor 68 (GPR68)が促進的に関与することを明らかにしている (1)。そこで本研究では、CKD時の心不全を抑制する新たな心保護薬の開発を目的に、GPR68の機能を抑制する天然物由来化合物を探索した。</p><p>【方 法】GPR68を高発現するヒト細胞株MDA-MB-231細胞を用いて、GPR68の機能を化学発光にて評価可能な細胞系を構築し、High throughput screening(HTS)を行った。5/6腎摘手術(5/6Nx)を施したICRマウスをCKDマウスとした。</p><p>【結果・考察】単球中GPR68の発現はCKDマウスのみでなく、ヒトCKD患者においても心不全病態と相関が認められた (1)。そこで、ヒトGPR68を阻害する化合物を探索するため、Nuclear factor of activated T cells (NFAT)応答配列(NRE)ルシフェラーゼ活性を指標としたHTS、および候補エキスの毒性試験を行った。その結果、GPR68の機能を抑制するイヌガヤ属植物由来のエキスを同定した。また、RAW264.7にGPR68発現を誘導すると炎症性サイトカインの産生能が上昇するが、エキスの曝露はこの上昇を有意に抑制した。そこで5/6Nxマウスにこのエキスを飲水投与した際の心臓の病態について解析を行った。その結果、5/6 Nxマウスで認められる炎症性サイトカインの増加、心臓の線維化、血中ナトリウム利尿ペプチドの増加のいずれもエキス投与によって有意に抑制された。さらに、心臓の所見のみでなく、5/6 Nxマウスで認められる体重減少や生存率低下についてもエキス投与によって有意に改善した。加えて、このエキスに含まれるアルカロイドから薬効成分を同定し、この成分がエキスと同様の抗炎症作用を有することも明らかにした。以上の結果から、本研究で同定した成分がCKDモデルマウスの心臓におけるGPR68活性阻害を介して炎症および線維化を抑制することが示唆された。</p><p>(1) Yoshida Y. et al., Nature Communications. 2021.</p>

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