多遺伝子パネルを活用した遺伝性・先天性疾患に対するクリニカル・シークエンスの臨床実装

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  • 古庄 知己
    信州大学医学部遺伝医学教室 信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センター 信州大学医学部クリニカル・シークエンス学講座 信州大学基盤研究支援センター機器分析部門 信州大学医学部附属病院バイオバンク信州

抄録

<p>信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センターは、1996年に設置された、大学病院としては最も古い遺伝子医療部門の一つである。小児科を背景とした臨床医である演者が着任した2003年当時、ほとんどの遺伝子解析は研究として実施されていた。2007年から国立循環器病研究センターのマルファン症候群および類縁大動脈疾患の遺伝子解析研究に参加する機会を得た。「遺伝子診療部に紹介すれば遺伝子を調べてもらえる」が明解なメッセージとなり、院内各科から遺伝子診療部への紹介は急増した。発端者のバリアント情報がわかることで、at risk者の早期診断およびそれに基づくprecision medicineが実現するに至った(丸山ら, 2014)。2005年頃に登場した次世代シークエンス(NGS)技術により、次々と遺伝性・先天性疾患の原因遺伝子が単離された。2011年、本学の基盤研究支援センターにIon PGMTMが導入された。NGSによるパネル解析は、症状から候補疾患を挙げ鑑別を進める遺伝医療に親和性が高く、近い将来遺伝医療の軸になると直感した。理学部出身の分子生物学研究者とともに、2012年に専門領域であった遺伝性結合組織疾患を対象にNGSを用いた遺伝子解析研究を開始、様々な遺伝性結合組織疾患の遺伝型-表現型に関する知見を明らかにしてきた(骨形成不全症、筋拘縮型、血管型および類古典型1型エーラス・ダンロス症候群)。2016年、保険収載された遺伝学的検査が増加したにも関わらず、当時受託施設はほとんどない状況であった。遺伝性疾患が疑われる患者を前にした臨床医がストレスなく遺伝学的検査を提出できる仕組みを目指して、2017年、当センターにてクリニカル・シークエンスを開始した。心掛けたのは電子カルテに始まり、電子カルテに戻るシンプルでかつ、幾重にも検証プロセスを経る堅固なシステムである。2020年、株式会社ビー・エム・エル、サーモフィッシャーサイエンティフィック ライフテクノロジーズジャパン株式会社の支援を受け世界初のクリニカル・シークエンス学講座を設立した。2023年現在、院内のみならず11大学病院、3小児病院から、210疾患約800遺伝子を対象としたクリニカル・シークエンスの受託を行っている。さらに多くの臨床現場に貢献できるよう企業への技術導出・人材育成を図っている。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390861692692853888
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_2-c-s34-4
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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